尾池 和夫

本日、京都大学ウイルス研究所が创立50周年を迎えられるに当たりまして、京都大学を代表して、一言お祝いのご挨拶を申し上げます。
ウイルス研究所は、今、影山龙一郎所长のお话にありましたように、1956年、昭和31年4月に、京都大学の附置研究所として创设されました。これは、戦后途絶えていた新しい研究所の一つとして创设されたものでありますが、名称にカタカナを冠する国立大学附置研究所は、当时としては大変珍しく、なかなかすんなりとは决まらなかったと闻いています。50年前、2つの研究室からスタートして、今では20以上の研究室を持って目覚ましい活跃をしています。
ウイルス研究所は、「ウイルスの探求並びにウイルス病の予防及び治療に関する学理及びその応用の研究」を目的として設立されたものでありますが、この50年間、まさにウイルス研究で世界をリードしてきました。その多くの研究成果の中でも特筆すべきは、ヒト成人T細胞白血病ウイルスの発見であります。先程ご説明がありましたように、この疾患は九州や四国を中心に成人に発症するT細胞の白血病です。その原因ウイルスが、当時ウイルス研究所の教授であった、日沼 頼夫(ひぬまよりお)先生によって突き止められました。一連の研究によって、本疾患の診断、予防、治療法の開発につながりました。特に、この疾患が予防できるようになったのは極めて重要なことであります。また、このウイルスはエイズを引き起こすウイルスとも共通点があることがわかり、その後のエイズ研究に多大な影響を与えたのであります。

一方、ウイルスは自己増殖する最も単纯な生命の単位であり、分子生物学の出発材料ともなりました。ウイルス研究所は创立当时、我が国における分子生物学のメッカの一つとしての役割も果たしました。また、ウイルスを理解するには、その宿主をもよく理解する必要があるという観点から、生命科学研究も连绵と行われています。
ウイルス研究所のもう一つの大きな特徴は、サルに対して感染実験を行える全国有数の笔3感染実験室を持っていることです。ヒトへの応用を考えますと、マウスの実験ではどうしても限界があり、サルを使った研究が必要です。本研究所のエイズ研究施设や感染症モデル研究センターでは、サルを使って感染実験やワクチンの开発が精力的に进められています。学内外とも多くの共同研究がなされており、今后も积极的に研究交流の推进を図っていただきたいと思います。
教育の面で、ウイルス研究所は、医学研究科、生命科学研究科、理学研究科、薬学研究科、人间?环境学研究科の5つの研究科の协力讲座からなっており、多くの异分野の研究者が交流するという、非常にユニークな研究环境を生み出しています。5つの研究科からは常に、百名以上の大学院生を受け入れ、次代を担う世界トップレベルの若い研究者を育ててきました。更に、平成14年度からは、生命科学研究科と共同で21世纪颁翱贰プログラム「先端生命科学の融合相互作用による拠点形成」を进めており、ウイルス?生命科学の研究教育の拠点となっています。今后とも、异分野交流を活発に进めることによって、研究と教育に大きな贡献をされることを期待しております。

20世纪になって、天然痘の扑灭宣言もあり、感染症はほぼ制圧できたと考えられた时期もありました。しかし、その后、エイズウイルスの感染爆発、新型肺炎厂础搁厂、トリインフルエンザ、エボラ出血热などの出现があり、新兴ウイルスは人类にとって大きな胁威となっています。まさにこのような事态に対応する役割で、昨年度、本研究所に新兴ウイルス感染症研究センターが新たに设置され、新兴ウイルス感染症の研究を精力的に进めているところであります。今では、ウイルス研究は人类の永远の课题とも言われ、今后の益々の発展が期待されています。