尾池 和夫
明けましておめでとうございます。佳い新年をお迎えになったこととお庆び申しあげます。
年末に松本理事から颈笔厂细胞研究センターの大筋が见えてきたという报告を受けて、私も今回は久しぶりにややゆっくりした休暇を顶きましたので、京都大学创立111周年の1月1日には、私もテレビで初日の出を见ておりました。
山中 伸弥先生たちの考えているiPS細胞研究センターの構想では、このセンターを中心にさまざまの研究機関によるiPS細胞研究コンソーシアムを形成して、ティームジャパンで幹細胞研究の全体を活性化しながら、再生医療応用を目指した研究を集中的に進めるということになるでしょう。関係機関のご理解とご協力を得ながら、京都大学としてこのような研究を全面的に支援していく考えであります。
昨年の出来事はたくさんありましたが、日本で五つ選ばれた世界トップレベル国際研究拠点形成促進プログラムの一つが、井村元総長によって導入された再生医科学研究所の研究活動を中心に組織された「物質ー細胞統合システム拠点」であり、さらにその研究成果の中から、山中 伸弥先生たちの研究成果が生まれたのです。
他にも昨年、さまざまの素晴らしいことがたくさんありました。京都大学名誉博士の称号を、ジェーングドール博士に授与したことも忘れられないことです。大晦日には、火星にある直径160キロという大きなクレーターに、花山天文台長であった宮本 正太郎先生の名が、IAU(国際天文学連合)によって付けられたというニュースが伝えられました。その他にも素晴らしいニュースがたくさんあります。ウェブサイトのトピックスやニュースリリースのページで、あらためてご覧いただきたいと存じます。
新しい年のことを少しくわしくお话ししたいと思います。
平成20年度の科学研究費補助金は、前年度に比べて19億円増の、1932億円が認められ、とくに若手研究者育成?支援の拡充で56億円の増があり、若手研究(B)と若手研究(スタートアップ)への間接経費30パーセントが措置されました。また「新学術領域研究」が新設され、人文?社会科学の振興として6 億円が措置されました。
京都大学に関しては、施设整备费で、北部构内の総合研究栋の改修、飞騨天文台の研究室の改修、中央の文学部陈列馆、人文科学研究所の本馆と西馆の改修が补正予算で実现し、宇治の本馆二期工事と颈笔厂细胞研究拠点施设が内定しました。
一方、桂キャンパスの整备は大幅に遅れていて、とくに工学研究科の方々には多大のご不便に耐えていただいていますが、国の施设整备に対する投资が少ない现状では进展を望むことができず、施设整备をどうやって进めていくか、皆さま方の実効あるお知恵をいただきたいと思っております。
入学定员の改订では、要求していたものがすべて认められました。内容は、医学研究科社会健康医学系専攻専门职课程の6名増、情报学研究科の修士课程21名増と博士课程14名减、経営管理教育部経営管理専攻の専门职课程15名増です。
特别教育研究経费では新规で要求した生存基盘科学におけるサイト型机动研究の推进など5件、継続の22件が採択され、再生医科学研究所干细胞医学研究センターなどで増额されたものが6件ありました。
ご承知のように、効率化係数として514,028千円、経営改善係数として445,937千円が减额されましたが、特殊要因経费、特别教育研究経费分を入れると、合计では6,469千円の减额で収まることになりました。
概算要求に関係して皆さんが努力して下さったおかげと、たいへん感谢しております。
政府の方针として、来年度、学部の定员超过を抑制する仕组みが新しく导入されました。平成20年度から以后に入学する学部学生の定员超过率で授业料収入相当额を积算しておいて、中期目标终了时に国库纳付させるという仕组みです。平成20年度は130パーセント、平成21年度は120パーセント、平成22年度からは110パーセント(定员100人以下の学部は120パーセント)という厳しいラインが设定されました。留年は2年以内が控除されるという仕组みであります。京都大学としても、この制度から大学教育のありかたの根干に関わる大きな影响をうけることになります。
さて、年末の12月24日のことですが、岛原の角屋で俳人たちが集まって开催される芜村忌の句会に招待されて参加することができました。芜村忌というのは、俳人であり、画家でもあった与谢芜村の忌日です。
财団法人角屋保存会が、江戸时代の扬屋文化の唯一の遗构である角屋の建造物と角屋中川家伝来の美术品や古文书类の保存と活用を図る事业を行っております。江戸の「もてなしの文化」の场として昭和27年(195年2)に国の重要文化财に指定されたものです。平成10年度から「角屋もてなしの文化美术馆」が开馆し、一部が公开されています。
この建物と文化财を初めて拝见して、私は京都大学が成果を上げてきた、木造建筑文化财の耐震化の技术などを役立てることのできる场所が、京都の中にまだまだ多く存在するということをあらためて认识しました。
今年は戊子(ぼし、つちのえね)の年です。福井地震から60年です。この年は前回の戊子の年でした。福井地震は西日本の前回の地震活动期最后の大地震で、死者と行方不明者3769名という大震灾となりました。その后50年近くの静穏期の后、1995年から西日本は次の地震活动期に入っています。花折断层など活断层の多い京都盆地にある京都大学は、震灾の軽减のために常に準备を进めていなければなりません。120年前の戊子の年、1888年には、7月15日に磐梯山が喷火して山体が崩壊し、泥流で461名が死亡しました。前回の地震活动期が始まった1891年浓尾地震は、京都大学创立の6年前でした。
京都大学では、昨年「湯川?朝永生誕100年」を祝って、まだその余韻がありますが、今年、2008年は、また指揮者の朝比奈 隆さんの生誕100年であります。朝比奈 隆さんは、京都帝国大学法学部在学中に京都大学交響楽団でヴィオラとヴァイオリンを担当しました。さらに学士入学した文学部卒業の1937年に、京都大学交響楽団を指揮して指揮者デビューしました。文学部在籍中から、現在の大阪音楽大学に勤め、卒業後教授に就任しました。
京都大学は、さまざまの人材を辈出してきたことをあらためて思い起こします。今年は、京都大学创立111周年です。それを记念して京都大学の将来を考えた论文を募集する计画があります。名誉教授の先生方も今日たくさんご参加くださっていますが、ぜひ力作を応募していただくよう期待しています。
本年もどうかご健康第一に、ご活跃くださるようお祈りして、新年の挨拶といたします。
ありがとうございました。