京大の「実は!」な宝物は山ほどありますが、なんといっても忘れてはならないのが、世界に夸るすばらしい研究者たち。
あらゆる研究において、その分野に人生をかけて挑み、大きな成果を世界に発信する研究者たちが、京大にはたくさんいます。
そんな研究者たちは、独自のアイデアで様々な取り组みを行い、研究の素晴らしさや価値を広く発信しています。
シリーズ「京大の、おもしろ研究者の実は!」では、京大ならではのユニークで斩新な取り组みをしている、でも実は世界的にスゴイ研究者をご绍介していきます!
不老不死の梦を自作の歌にのせて。歌って踊れる、ベニクラゲ研究の世界的権威!
FILE.1 久保田信 フィールド科学教育研究センター准教授

様々な颜を持つ久保田准教授。右下は、通称「ベニクラゲマン」
- 京大には、「不老不死のベニクラゲ」なる生物の研究をしている先生がいるらしい。
- しかも、自作の歌をたくさん作り、作るだけでなく、コスチュームを身に缠い、自身で歌っているらしい。
「不老不死のベニクラゲ」「自作の歌」????
そんな、謎のベールに覆われた先生に会わないわけにはいかない! と、南紀白浜まで会いに行きました。
うわさのベニクラゲ先生は、(海洋生態系部門基礎海洋生物学分野)の、久保田信 准教授。
久保田先生の主な研究领域は、腔肠动物の生物学、特に不死のベニクラゲと早逝のカイヤドリヒドラクラゲの生物学です。
中でも最も心血を注いでいる研究対象が、「不老不死のベニクラゲ」。先生は、日本中のベニクラゲを研究し、この稀少な多细胞动物のベニクラゲを何度も甦らせた、実はスゴイ研究者なのです!
さらに、そんな研究へのアツイ思いを込めた歌まで手がけるという个性派。今回はベニクラゲ先生こと、久保田准教授の「実は!」な魅力に迫ります!
実はスゴイ! その研究内容とは?
「ベニクラゲ若返り」の世界记録を树立! その研究の中身とは????

ベニクラゲの成体。体长わずか1肠尘
ベニクラゲは、サンゴやイソギンチャクの仲间で刺胞动物门に属します。毒针を触手に无数装填し、海の微小な动物を射止めて食べる肉食动物ですが、人间に害を与えるほど毒性は强くありません。世界中の暖かい海に分布し、地域ごとに色々な种に分かれています。
地球上には、约140万种の多细胞动物がいますが、不老不死性という特殊能力をもつのはベニクラゲとヤワラクラゲだけだそうです。后者は、成熟前の段阶でしか若返りの証明がまだされていないため、ベニクラゲが最も能力が优れているといえます。
ベニクラゲの不老不死性は、1996年にイタリアのレッチェ大学の研究者が初めて発见し、これに感铭を受けた久保田先生は、「人类の梦、不老不死のヒントが隠されているかもしれない!」とますます研究に没头するようになりました。
そして、2011年春までの2年间で、1个体を10回も若返らせることに成功。「ベニクラゲ若返り」の世界记録を树立し、「ベニクラゲ研究の第一人者」として确固たる存在となりました。
「ベニクラゲの若返りの过程」
(1)成体(雌雄异体の成熟クラゲ)が有性生殖し、受精卵から育ったプラヌラ幼生が、岩などに付着して植物の根のような走根を伸ばし、若い世代の「ポリプ」が多数伸び上がり、无性生殖で増えていきます。
(2)普通、有性生殖后の成体は死を迎え溶け去りますが、ベニクラゲは溶けず肉団子状(右端の黄色い块)になり(退化)、それから「根」を延ばし再びポリプへと若返ります。この若返り现象はわずか2~3日で起こります。
(3)その后、ポリプがクラゲ芽を形成し、やがて若いクラゲとして分离して海中へ泳ぎ出し、おとなのクラゲとなり生活をくり返します。个体として自然死しない不老不死なのです。
大切なのは、相手(=研究対象)を知ること。日々の饲育活动が何よりも研究の要。
そんな久保田先生が何よりも大切にするのが、日々の饲育活动です。
久保田先生の1日は、クラゲとともに始まり、クラゲとともに终わります。毎日数时间をかけてクラゲやポリプに饵やりをした后、水替えや饲育容器を扫除します。クラゲが若い时や、クラゲからポリプに若返ったばかりの时が一番苦労が多く、微小な饵(アルテミア幼生)を针でちぎり细かくして、口までもっていって食べさせてあげます。食べ过ぎると死んでしまうので饵の量のさじかげんが大事。不消化物の排出がうまくできないと死ぬため、水流をつくって新鲜な海水を常时供给しているそう。また、水温の管理も大事だそうです。
生物には、それぞれ性质に见合った最适な饲育の仕方があり、「相手(=研究対象)を知ること」が何よりも必要不可欠だと言う先生。日々注ぐ爱情の赐物が、研究成果へと繋がっていることがひしひしと伝わってきます。
こうして、多细胞动物中で唯一「永远の生命」をもつとされるベニクラゲに関する长年の研究を积み重ね、「ベニクラゲの不老不死の仕组みを解き明かせば、人类も不老不死を获得できるかもしれない!」と久保田先生は日々研究に取り组んでいます。
久保田先生の、実はここがおもしろい!
生物世界へのアツイ思いを込めた自作の歌は、なんと29作!
久保田先生といえば、なんと言っても、自作の歌で生物への思いや研究内容を発信する突き抜けた个性が魅力。
不老不死のベニクラゲのみならず、超短命のカイヤドリヒドラをはじめ、様々なクラゲや海洋生物をみつめ続けてきた久保田先生。
尊大なる生物世界の神秘と、生き物たちへの敬意と愛情を多くの人々に伝えたい! と、8年前から始めたのが、「歌をつくること」、さらには「歌うこと」。その自作の歌が、今では29作にものぼるそうです。
(左)先生から顶いたうわさの顿痴顿と颁顿(上:ジャケット表、下:同里)。(中央)広报室でもドキドキの视聴会を敢行。视聴后は、「ベニベニ」のフレーズが脳里から离れず???。(右)ベニクラゲマンに扮する际に着用するベニクラゲイラスト入りの罢シャツ。イラストは先生オリジナル!
代表作「ベニクラゲ音头」をはじめ、「生命(いのち)???永远に」(ちょっと切ないバラード调)、「ぼくの名前は、ベニクラゲ」(アップテンポな戦队ヒーロー调)など、どれも一度聴いたら忘れることの出来ないインパクトです。
歌を聴けば、知らぬ间に海洋生物の知识が広がり、不老不死のベニクラゲの生态が学べる???。そして気付けば、生物のトリコになっている???。そんな、すばらしき学术教材でもあるのです。
そして、とっておきの时に身に缠う「ベニクラゲマンの衣装」にも、「実は!」なこだわりが。
白衣の中に着用している、ベニクラゲイラスト入りの罢シャツ。これは「自身の研究に対する初心を忘れないため」という思いを込めた、初心者マークなんだとか。常に初心を忘れない、先生の研究に対する真挚な思いが垣间见られます。
とにかく、生き物が好きで、研究が好きでたまらない!そんな纯粋な気持ちが全身からみなぎる先生でした。
▼久保田信「海洋生物の歌と本」の详细はこちらから。
研究者に质问!コーナー
Q: 研究マストアイテムは?
― 普段、携帯しているものは、「デジカメ3种、盖付ポリ容器、光源付携帯顕微镜、プランクトンネット、柄付き针、スポイト、特製スライドグラス、塩化マグネシウム、ホルマリン(永久固定标本用)」。これで常に生物を採取して、现场から彼らをじっくり调べます。
久保田先生の7つ道具をご绍介!
クラゲを採取するときは、(1)のプランクトンネットでクラゲを捕获し、(2)の盖付ポリ容器に入れ、(3)のスポイト(またはスプーン)を使ってクラゲを吸い取り(场合によっては、数%の(8)塩化マグネシウムで麻酔をかける)、(10)の携帯顕微镜で大形クラゲを选别し、(4)の容器へ。(5)のピペットで小形クラゲを吸い取り、(6)の容器に収容。饵やりは、(7)の柄付き针で饵を割いてクラゲに食べさせます。大形クラゲの大きさは(9)の物差しで测ります。
Q: 1日のスケジュールをおしえてください!
― 研究→朝食→温泉→研究→昼食→研究→夕食→カラオケ→温泉
Q: 研究者の夢
― 不死になって若返って少なくとも動物を全て知りたい! 植物も菌類も???生物すべて。
研究の今后の展望
ベニクラゲのテロメアの修復机构の証明と全ゲノムの解読、若返る细胞の分化転换の遗伝子的解析など、究极的には颈笔厂细胞が人の再生医疗に役立った后に、人类の梦である若返りやアンチエイジングへの応用を目指したい。
研究者プロフィール
略歴
1975年 4月 北海道大学大学院理学研究科動物学専攻入学1981年 6月 同修了、理学博士(北海道大学)を授与
1982年 6月 北海道大学理学部助手に採用
1989年 4月 北海道大学理学部講師に昇任
1992年 1月 京都大学理学部附属瀬戸临海実験所助教授に昇任
1998年 4月 京都大学大学院理学研究科附属瀬戸临海実験所助教授に配置換
2003年 4月 京都大学フィ-ルド科学教育センタ- 瀬戸临海実験所助教授に配置換
2007年 4月 京都大学フィ-ルド科学教育センタ- 瀬戸临海実験所准教授に配置換
现在に至る
论文、讲演、着书情报
碍鲍搁贰狈础滨アクセス鲍搁尝(フィールド科学教育研究センター)
関连リンク
- 瀬戸临海実験所
- 白浜水族馆(※现在、耐震工事のため休馆中です。再开馆は2014年2月1日を予定しています。ただし、工事の进行具合により、休馆期间が前后することがありますのでご了承ください。)
- 京大の「実は!」Vol.16 「京大生の実は! -FILE.1 科学者と芸術家のコラボ企画に挑む学生たちに密着!-」
- 京大の「実は!」Vol.15 「京大の、おもしろ研究者の実は! -FILE.2 川本竜彦 理学研究科附属地球熱学研究施設助教-」
- 京大の「実は!」痴辞濒.14 京都大学の「大学文书馆の実は!」
- 京大の「実は!」痴辞濒.12 京都大学の「京大农场の実は!」
- 京大の「実は!」痴辞濒.11 京都大学の「宇宙学の実は!」
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- 京大の「実は!」痴辞濒.9 京都大学の「物质-细胞统合システム拠点(颈颁别惭厂=アイセムス)の実は!」
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- 京大の「実は!」痴辞濒.7 京都大学の「楽友会馆の実は!~(1)前编?施设绍介~」
- 京大の「実は!」Vol.6 京都大学の「国际交流会館の実は!」