アルツハイマー病の记忆障害に対しては、运动疗法のほうが食事疗法より効果がある:モデルマウスの解析から

アルツハイマー病の记忆障害に対しては、运动疗法のほうが食事疗法より効果がある:モデルマウスの解析から

2012年5月7日

 木下 彩栄 医学研究科人間健康科学系専攻教授の研究グループは、アルツハイマー病の介入研究について、これまで疫学的に良いとされていた運動療法がアルツハイマー病の認知機能に効果をもたらすメカニズムの一端を解明し、運動と食事という介入を比較して、どちらの介入を優先すべきかということを明らかにしました。この研究成果は、「The Journal of Biological Chemistry」に掲載されました。

概要

 高齢化が急速に进む本邦では、认知症患者が激増しています。现在、200万人以上の方が认知症に罹患しているとされていますが、中でもアルツハイマー病は进行を止める治疗薬もなく、介护负担の重さから大きな社会问题となっています。

 最近、アルツハイマー病の危険因子として、糖尿病や高脂血症などの生活习惯病との関连が疫学的に注目されるようになってきました。2011年の国际アルツハイマー病学会でも、生活习惯病や教育といった介入可能な项目に介入することで、全世界で50%程度患者数を减らすことができるのではないかという试算もされています。

 そこで、わたしたちは、アルツハイマー病のモデルマウスの使い、「どのような介入が効果があるか」ということをモデルマウスを利用して调べてみました。

 図1に示すように、まずアルツハイマー病のモデルマウス(础笔笔マウス)に高脂肪食を食べさせます。すると、认知机能が悪化し、脳内のアミロイドという物质(アルツハイマー病の目印)がたくさん蓄积することがこれまでの研究で报告されており、アルツハイマー病と糖尿病や高脂血症との関连が示唆されています。このマウスに、高脂肪食を食べさせたまま自発的な运动をさせてみます(贰虫)。あるいは、运动をさせないで、このマウスの食事を普通の食事に代えてみます(顿肠)。また、自発的な运动と食事疗法の组み合わせも设定します(贰虫+顿肠)。


図1:実験デザイン

 図2に示すように、これらのマウスに惭辞谤谤颈蝉水迷路试験という行动実験を行い、认知机能(记忆)を测定すると、高脂肪食で悪化した认知机能(赤:础笔笔-贬贵顿)が自発的な运动(贰虫)によって顕着に改善を示し、その程度は食事治疗(顿肠)よりも大きく、运动のみでも贰虫+顿肠の组み合わせと同等の効果が得られることがわかりました(図2叠では、プラットホームに到达するまでの时间が贰虫、贰虫+顿肠では早くなり、颁においては贰虫、贰虫+顿肠の条件で、目的地に到达する回数が増加していることを示しています)。


図2:运动疗法は认知机能低下を顕着に改善した

 この结果より、高脂肪食を与えて认知机能の悪化したアルツハイマー病モデルマウスでは、认知机能の改善という点から运动疗法のほうが食事疗法より「より効果的」であったことがわかりました。また、食事は高脂肪食のままでも运动すれば(通常の食事に戻したマウスと同等の)効果が出ることがわかりました。

社会的意义

 この论文では、运动による効果を、记忆を検査する行动実験の结果のみならず、脳内のアミロイド蓄积の点からも検証しています。また、アミロイド蓄积が减少した理由についても、ネプリライシンという酵素の诱导によるものではないかという考察も述べています。

 この研究の社会的な意义としては、これまで疫学的に良いとされていた运动疗法がアルツハイマー病の认知机能に効果をもたらすメカニズムの一端を解明したという点と、运动と食事という介入を比较して、どちらの介入を优先すべきかということを明らかにしたという点です。これらは今まで十分に解明されていなかった点ですが、実地临床に即、応用できる点から、広く社会に発信すべき研究成果と考えます。

书誌情报

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Masato Maesako, Kengo Uemura, Masakazu Kubota, Akira Kuzuya, Kazuki Sasaki, Naoko Hayashida, Megumi Asada-Utsugi, Kiwamu Watanabe, Maiko Uemura, Takeshi Kihara, Ryosuke Takahashi, Shun Shimohama and Ayae Kinoshita.
Exercise is more effective than diet control in preventing high fat diet-induced β-amyloid deposition and memory deficit in amyloid precursor protein transgenic mice. The Journal of Biological Chemistry. May 4, 2012.
doi: 10.1074/jbc.M112.367011

関连リンク

  • 医学研究科人间健康科学系専攻ホームページ

 

  • 京都新聞(5月8日 29面)、産経新聞(5月8日 2面)、日本経済新聞(5月8日夕刊 14面)および毎日新聞(5月20日 25面)に掲載されました。