観测値から地盘挙动のメカニズムを把握し、将来予测に役立てる-データ同化を応用したリスク评価に期待-

観测値から地盘挙动のメカニズムを把握し、将来予测に役立てる-データ同化を応用したリスク评価に期待-

2012年10月1日

 村上章 農学研究科教授、藤澤和謙 同講師(前岡山大学講師)、西村伸一 岡山大学教授、珠玖隆行 同助教、中村和幸 明治大学特任講師は、樋口知之 統計数理研究所長との共同研究により、地盤挙動観測値に対してデータ同化手法(粒子フィルタ)を适用し、土の弾塑性モデルのパラメータを合理的に同定して将来予测精度を向上させるとともに、リスク评価に有用な情报となる确率分布を同时に求める手法を确立しました。提案法は室内実験や神戸空港岛护岸建设工事の観测値に适用され、その有用性が実証されました。

 本研究成果は、「Int. J. Numer. Anal. Methods Geomech.」(オンライン誌)に掲載されました。

概要

  データ同化は気象学、海洋学など地球科学分野において1990年代以降急速に発展を遂げ、2010年前後から国内外で多くの入門書?啓蒙書が刊行されています。その目的は以下のように、多岐に亘ります。

  1. 予测のための最适な初期条件/境界条件を求める
  2. シミュレーションモデル内に含まれるパラメータの最适値を求める
  3. 観测されていない时间?空间点における観测値を补间する(観测値に基づき、シミュレーションの予测値补正を実时间で行う)
  4. 効率的な観测システムを构筑するための仮想観测ネットワークシミュレーション実験を行う

これらは、従来の逆解析の概念をさらに拡张したものです。本论文では、上记のうち2.を地盘挙动観测値に适用し、今まで困难があった土の弾塑性モデルのパラメータ推定について、その最适値と确率分布を载荷経路に沿って解析する手段を提案しました。

  本論文では種々のデータ同化手法の特徴を整理し、弾塑性モデルに対しては粒子フィルタ、とりわけSequential Importance Sampling(SIS)と呼ばれるアルゴリズムが有効であることを、弾塑性构成モデルの力学特性に関する考察に基づいて论理的に説明しました。さらに、その有効性を多様な条件の下での数値実験および模型実験から得られた観测値に基づいて実証しました。対象となる问题に仮定を设けることなく、また求めるパラメータに制约がないため、透水係数や圧缩指数といった変形挙动に直接関わるパラメータのみならず、初期の応力状态もその同定の対象とすることができます。これまで、地盘解析では初期応力に密接に関连する静止土圧係数の决定が困难であり、种々の経験式により决定することが一般的でした。本论文で提案した方法により、正确な地盘内応力状态の把握や、既存の応力状态推定法の精度検証が可能となり、実务上の応用が大きく期待されます。


図1: 地盤工学におけるデータ同化


  さらに、データ同化によれば、パラメータの値をその確率分布の形で得ることができることが特色です。この分布に対応して、同時に変位や応力、間隙水圧の確率分布を得ることができ、これらの確率分布は基礎や土構造物のリスク評価に適用することができます。このように、データ同化は基礎?土構造物設計法の新たな進展にも貢献できる手法です。


図2: Sequential Importance Sampling(SIS)の計算アルゴリズム


図3:(a)神戸空港島の解析に用いた有限要素メッシュ、(b)解析結果と観測値の比較.Direct analysisが順解析の結果、Data assimilationが粒子フィルタにより同定されたパラメータを用いた解析結果.

本研究の一部は、科学研究费补助金基盘研究(础)「データ同化による越流侵食リスクに基づく农业水利施设(群)のアセットマネジメント」、挑戦的萌芽研究「统计数理手法を用いた汎用的逆解析システムの开発:性能设计/维持管理への応用」の助成を受けて行われました。

用语解説

データ同化

データ同化とは、観测等で得られたデータを、计算机上でのシミュレーション解析に统计学的観点から适切に反映する手法のことで、现业の気象予报や温暖化予测等において広く使われています。その目的は、実现象の予测精度向上のための初期?境界条件の构筑や最适なパラメータを求めることだけでなく、时空间的な补间によるデータの整备、観测効率を挙げる计测デザインなど多岐にわたります。近年では、データが大量に记録されるようになったことから、従来の気象?海洋学を中心とした地球科学分野だけでなく、生命科学やものづくりといった分野にまで适用対象が広がっています。

粒子フィルタ

もともとは时系列解析分野で开発された计算手法で、时间変动する未知の状态とそこから确率的に决まる観测値からなる状态空间モデルと呼ばれるシステムにおいて、得られた観测値から未知の状态を逐次的かつ确率的に推测する方法のことです。确率的な计算を正确に行うために、モンテカルロ近似が用いられる点に特徴があります。近年の大量データ解析の流れの中で注目されているベイズ解析の一手法でもあり、物体追跡といった动画像解析や経済データの解析などに広く使われています。

Sequential Importance Sampling(SIS)

粒子フィルタの一手法で、観测を用いてモンテカルロ近似のサンプル重みを、ベイズの定理を用いて逐次的に更新していく方法のことです。计算において重みのみの更新で済むため、本研究で対象としている弾塑性构成モデルのような、観测値に基づくシミュレーション変数の更新が困难なシステムでも适用が可能です。

书誌情报

[DOI]

"Data assimilation using the particle filter for identifying the elasto-plastic material properties of geomaterials"
Akira Murakami, Takayuki Shuku, Shin-ichi Nishimura, Kazunori Fujisawa and Kazuyuki Nakamura, International Journal for Numerical and Analytical Methods in Geomechanics