2013年11月15日
成宮周 医学研究科特任教授(メディカルイノベーションセンターセンター長)と渡邉定則 名古屋大学理学研究科研究員(日本学術振興会特別研究員)らのグループは、生体で働いている細胞質分裂の分子メカニズムを明らかにしました。
本研究成果は、2013年11月14日(米国東部時間)に「Cell Reports」のオンライン版に掲載されました。
ポイント
- 细胞が分裂によって増殖することは周知の事実である。分裂は倍加した染色体が各々の极に分かれる核分裂のあと、细胞质がくびれきられる细胞质分裂で终了する(図1)。
図1:细胞质分裂 - この细胞质分裂は、核分裂の终期に娘细胞の间に収缩环という構造が生じ、これが収縮して達成される。本研究グループの以前の培養細胞を用いた研究で、低分子量G蛋白質Rhoが核分裂から細胞質分裂への分子スイッチとして働くこと、RhoはmDia2という蛋白質に働いて収缩环の成分であるアクチン繊维を作り出して细胞质分裂を遂行することが明らかになっていた。
- 上记のメカニズムが培养细胞で働くことは明らかであったが、これが実际の个体の细胞分裂で働いているかはまったく不明であった。今回、本研究グループは、マウスで尘顿颈补2の遗伝子を欠损させると、赤血球への分化段阶にある赤芽球の细胞质分裂が失败することを明らかにした。これは、ほ乳类个体の细胞で细胞质分裂という细胞の基本メカニズムを明らかにした最初の例である。
研究の背景
われわれの体は細胞が分裂を繰り返すことで形作られ、また、維持されています。教科書にあるように、細胞が分裂する際には、娘細胞の真ん中に収缩环と呼ばれるリング状構造が形成され、その収縮により、細胞が二つに分かれます(図1)。このプロセスは細胞質分裂とよばれ、生物学?医学的にも基礎必須メカニズムとして、さまざまなモデル生物の変異体や培養細胞を用いた連綿たる研究により明らかにされてきました。これまでの研究により、この収缩环はアクチンという蛋白質が重合し繊維化することで生み出されることはわかっていましたが、多種多様の細胞が生み出される哺乳類の発生過程の細胞質分裂で、どのような分子が働き、どれほど重要なのかは、生命の基本原理にも関わらず未解明のままでした。
研究手法?成果
本研究グループは、これまで培養哺乳類細胞の細胞質分裂でRhoとその標的蛋白質でありアクチン重合促進分子でもあるmDia2が重要な働きをなすことを明らかにしていました。今回、個体での働きを明らかにするため、mDia2を全身性に欠損したマウス(mDia2欠損マウス)を作出し解析しました。この変異マウスは、胎生11.5日齡まで大きな異常なく発生しましたが、胎生12.5日齡に致死となったため、致死期の胎児の血液を解析したところ、末梢血内の赤血球数が著しく減少し、その多くが多核となっていることを見いだしました(図2、下左)。このメカニズムを調べるため、赤血球細胞を分化させる分化誘導実験により詳細に検討したところ、mDia2欠損マウス由来の細胞では、赤血球分化後期の赤芽球(赤血球前駆細胞)が分化する段階から、高い割合で細胞質分裂に失敗していました(図3、下中)。実際にmDia2欠損赤芽球では、収缩环のアクチン繊維重合の障害を認めたため、これらのことから、ほ乳類発生に必須となる赤血球産出のための細胞質分裂には、mDia2によるアクチン繊維の形成が重要であることが初めて明らかになりました(図4、下右)。
(左)図2:尘顿颈补2欠损マウス胎児末梢血内の赤血球异常、(中央)図3:赤血球分化途中の细胞质分裂异常、(右)図4:本研究で解明された机构
本研究成果は、山本雅之 東北大学教授、清水律子 同教授、金子寛 同助教、清成寛 理化学研究所動物実験支援ユニットリーダーおよび五島剛太 名古屋大学教授との共同研究ならびに、以下の事業?研究費の支援によって得られました。
- 科学研究費補助金 基盤研究(S)
- 科学研究費補助金 特別研究員奨励費
用语解説
収缩环
分裂する细胞の中央部に形成されるリング状の构造で、アクチン繊维および収缩を调节する蛋白质が多く集积している。
アクチン
细胞内に豊富に存在する球状の蛋白质。重合してらせん状のフィラメントを形成し、真核细胞の细胞内骨格の主要成分として细胞の形や动きに重要な働きをもつ。
书誌情报
[DOI]
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"Loss of a Rho-regulated actin nucleator, mDia2, impairs cytokinesis during mouse fetal erythropoiesis"
(搁丑辞标的アクチン重合因子尘顿颈补2の欠损によるマウス胎生期血液形成时の细胞质分裂の障害)
Watanabe, S., De Zan, T., Ishizaki, T., Yasuda, S., Kamijo, H., Yamada, D., Aoki, T., Kiyonari, H., Kaneko, H., Shimizu, R., Yamamoto, M., Goshima, G., and Narumiya, S.
Cell Reports, 14 November 2013
- 日刊工業新聞(11月15日 19面)に掲載されました。