京都大学では、5年一贯の博士课程教育リーディングプログラム「デザイン学大学院连携プログラム」を2013年4月から开始します。本プログラムでは、异なる分野の専门家と协働して「社会のシステムやアーキテクチャ」をデザインできる博士人材を育成します。多角的な视点から物事の本质を深く研究する京都大学の伝统を活かして、异なる立场?领域に属する多くの関係主体のコラボレーションによる人材育成を目指す试みです。具体的には、产学官连携、国际连携、大学间连携による教育の推进を目的として、本学の吉田、桂、宇治キャンパスと京都市立芸术大学のハブとなるデザインイノベーション拠点を京都リサーチパークに设立し、リーディング大学院を可视化します。本拠点を产学官により运営し、リーディングプロジェクトや、问题発见型/解决型学习(贵叠尝/笔叠尝)を常时社会に开放します。このように、リーディングプログラムを対外的にオープンにした活动を「京都大学デザインスクール」と通称し、社会と共に教育研究を行う姿势を広く世界に伝えます。
背景
国際社会は今、温暖化、災害、エネルギー、食糧、人口など複合的な問題の解決を求めています。そこで本プログラムでは、異なる分野の専門家と協働して「社会のシステムやアーキテクチャ」をデザインできる博士人材を育成します。またそのために、情報学や工学の基礎研究を結集し、複雑化する問題を解決するための、新たなデザイン方法論を構築します。これによって、Cyber(情報学など)とPhysical(工学など)の専門家が、経営学、心理学、芸術系の専門家と協働して、問題の発見と解決ができるよう教育を行います。要するに専門家の共通言語として「デザイン学」を教育し、社会を変革する専門家を育成します。こうした人材を、ジェネラリストを意味する「T字型人材(T Shaped People)」と対比させ、専門領域を超えて協働できる突出した専門家という意味を込めて「十字型人材(+Shaped People)」と呼び、本プログラムにより養成すべき人材像とします。
我が国では、过去10年ほどの间に、専门领域に特化したデザイン専攻(机械システムデザイン専攻、环境デザイン専攻など)が多数生まれてきました。これに対し本プログラムは、専门领域に特化しない一般性のあるデザイン学博士教育を行うものです。同じ志を持つ世界の大学(スタンフォード大学、ハーバード大学、ミシガン大学、アールト大学、ロンドン大学、清华大学など)や国内の大学と连携し、デザイン学の确立に向けて不断の検讨を进めていきます。
特徴
1. デザイン学の確立と産学官連携による人材育成を狙った3層構成
新しい领域であるデザイン学を确立するには、フォーカスした教育阵と同时に、大きな広がりのある活动を生み出していく必要があります。そのため、本プログラムの実施组织を3层で构成します(図1参照)。
まず、デザイン学の5年一贯教育を担当する「京都大学デザイン学大学院连携プログラム」(情报学、建筑学、机械工学、心理学、経営学)を教育研究指导体制の中核とします。京都大学では、情报学研究科、工学研究科、教育学研究科、経営管理教育部から20名のプログラム担当者が、参画11専攻を代表して参加します。さらに、芸术系领域を担当する京都市立芸术大学大学院美术研究科の参画によって、教育研究指导体制が强化されています。次に、デザインの対象となる领域との协业を行う「京都大学デザインスクール」(防灾学、农学、看护学、医学など多様な専门领域を含む)を、広がりのある本プログラムの活动全体の通称とします。さらに、デザインの主体からなる「京都大学デザインイノベーションコンソーシアム」(国内外の公司、非営利団体、自治体など)を発足させ、本プログラムの支援体制を构筑します。
2. 社会の実問題に取り組むデザイン学カリキュラム
优秀な学生をリーダーへと导くため、本プログラムでは、俯瞰力を锻える「コースワーク」と、独创性を育てる「学位研究」を备えています(図2参照)。
俯瞰力を锻えるコースワークは、博士前期课程におけるデザイン学共通科目とデザイン学领域科目(主领域)、博士后期课程におけるデザイン学领域科目(副领域)と海外やフィールドにおけるインターンシップなどから构成されます。デザイン学共通科目の讲义は、(1)デザインとは何かを议论する「デザイン方法论」、(2)人工物、情报、组织?コミュニティのデザインなど、広领域のデザイン论、(3)エスノグラフィ、データ分析、モデリング、シミュレーションなど、现场の问题理解のための「フィールド分析法」から构成されます。一方、デザイン学领域科目は、情报学、机械工学、建筑学、経営学、心理学の5领域の科目からなり、副领域としても履修可能とします。博士后期课程では、海外インターンシップやフィールドインターンシップによって、国际的かつ実践的研究の感覚を磨き俯瞰力を高めます。特にフィールドインターンシップは、「现场の教育力」を活用する新たな试みで、専门领域の异なる学生がチームを构成し、数か月フィールドに滞在して活动するものです。
独創性を育てる学位研究は、博士前期課程における問題発見型/解決型学習(FBL/PBL)、博士後期課程におけるオープンイノベーション実習、博士研究を行うリーディングプロジェクトという3段階の実践教育の中で行います。まず博士前期課程で、実社会に内在する課題を抽出する問題発見型学習(FBL: Field-Based Learning)と、実社会の問題に対して解を見出す問題解決型学習(PBL: Problem-Based Learning)を実施します。演習テーマの約半数は、教員が取り組む実問題を実習化したもので、「再生可能エネルギーの普及」や「都市エリアのデザイン」など本格的なものです。他の半数は、企業、自治体などから持ち込まれる実問題を演習化したもので、学生はテーマ提供者の協力を得て、「専門家の卵」として課題に取り組みます。その後、学生は、多様な専門家と共にオープンイノベーション実習を体験します。ここでの学生の役割は、専門家の卵ではなく、専門家チームをマネジメントをする「ファシリテータ」です。さらに博士研究を、産学官のリーディングプロジェクトに参加し、複数のアドバイザの指導(複数アドバイザ制度)の下で行います。
3. 産学官連携のためのデザインイノベーション拠点
リーディングプログラムの実习やプロジェクトを行う教育研究环境として、分散した京都大学のキャンパス(吉田?桂?宇治)と京都市立芸术大学のハブとして、地理的にもその中心に位置する京都リサーチパーク内にデザインイノベーション拠点を设置し、本プログラムの推进拠点とします(図3参照)。さらに、同拠点を国际的に开放し、交流先大学の学生?教员の滞在する场とすることにより、国际的に切磋琢磨し刺激し合うことのできる环境とします。また、京都大学の吉田、桂、宇治キャンパスや京都市立芸术大学と拠点を结ぶキャンパス协働システムを整备し、远隔地からの受讲や、地理的に分散した共同作业の実施を可能とします。
特に、学生がチームを形成して取り组む问题発见型学习(贵叠尝)や问题解决型学习(笔叠尝)は、本プログラム学生だけでなく社会人や芸术系学生にも开放します。また、博士研究を、社会の実问题に挑戦するリーディングプロジェクト(共同研究讲座、产学(官公民)プロジェクト、萌芽的プロジェクト)は拠点を中心に実施します。さらに本拠点にはフューチャーセンターを置き、产の抱える问题と、学の教育研究の桥渡しを行います。具体的には、フューチャーセンター経由で持ち込まれた実问题ごとに、オープンイノベーションのための専门家チームを构成し、训练した学生をファシリテータとして参加させます。
また、深い専门性を备えつつ横连携できる人材を育成し社会の原动力とするためには、新たな产学官连携モデルを生み出すことが必要です。本拠点を、大学と公司の双方に接する产学官连携の中核とし、日本の风土や文化に根差したモデルの构筑を目指していきます。
(1) デザイン学大学院連携プログラムの位置づけ
(2) デザイン学大学院連携プログラムの連携体制
図1 デザイン学大学院連携プログラムの組織構成
本プログラムは、以下の特徴を备える。
- 情报学、机械工学、建筑学、経営学、心理学を结集したデザイン学共通科目と、デザイン学领域科目(主领域?副领域)から成る网罗的な科目设计
- 国际连携ネットワークに支えられた海外インターンシップ(个人単位)による豊かな学生交流
- 「现场の教育力」を活用するフィールドインターンシップ(グループ単位)の新たな导入
- 専门领域を超えた学生チームによる问题発见型学习(贵叠尝)と问题解决型学习(笔叠尝)
- フューチャーセンター(オープンイノベーション机能)を有するデザインイノベーション拠点をハブとした产学(官公民)连携
- 社会の実问题を扱うリーディングプロジェクトの中での、复数アドバイザ制度に基づく博士研究
図2 デザイン学大学院連携プログラムのカリキュラム
![]() 拠点が立地する京都リサーチパーク9号馆 | ![]() サマーデザインスクールの様子(2012年9月) |
図3 デザインイノベーション拠点