2014年8月15日
浜地格 工学研究科教授らは、天然に存在する膜蛋白質に蛍光色素等の目印を付けるための分子ツールを開発しました。特に、実際に生きた細胞の膜表層に存在する蛋白質に、遺伝子操作などの余分な処理を施すことなく目印をつけることで、極めて天然に近い環境下で、蛋白質のイメージング(可視化)や、寿命、分解過程を解析することに成功しました。
本研究成果は、2014年8月14日正午(アメリカ东部时间贰厂罢)に米国セル出版「颁丑别尘颈蝉迟谤测&叠颈辞濒辞驳测」のオンライン速报版で公开されました。
研究者からのコメント
蛋白质の分解や寿命は生体内で厳密に制御されており、その异常はさまざまな疾病に関わることが知られています。したがって、より自然な状态でその寿命や分解経路を解析出来れば、発病のメカニズム解明やその蛋白质を标的とした创薬开発に新しいアプローチを提供できると期待されます。
本研究では、特に広範な生理機能に関わる膜蛋白質を、より自然に近い形でラベル化し分解挙動などの動態を追跡できるケミカルツールの開発に成功しました。今後は組織や生物個体(in vivo)での適用を目指して、研究を進めていく予定です。
概要
细胞には何万种类もの蛋白质が存在し、极めて复雑な环境の中でそれぞれが働いたり、不要になったら分解されたりしています。
この蛋白质を可视化し観察するための手法として、これまで骋贵笔(緑色蛍光蛋白质)を使った遗伝子工学的な手法を用いる必要がありました。この手法は、人為的に设计し作製された遗伝子を细胞内に导入し、観察したい蛋白质に似た「モデル蛋白质」を観察するものです。したがって、もともと细胞に存在している蛋白质をそのまま観察することは不可能で、本来の蛋白质の挙动を観察できる技术が待ち望まれていました。
本研究グループは、天然に存在している蛋白质そのものを、遗伝子工学を用いずに有机化学によって蛍光色素等で目印をつける「尝顿础滨ラベル化法」の开発を行ってきました。これは、ラベル化剤と呼ばれる分子を细胞にかけるだけで、特定の狙った蛋白质のみに目印を付けて可视化を可能とし、解析する手法です。
本発表では、尝顿础滨ラベル化法が、ガンやその他の疾病に深く関连するため、创薬の标的として注目されているさまざまな膜蛋白质に広く适用でき、天然に存在する膜蛋白质を可视化(イメージング)し、动态を観察できるだけでなく、それぞれの膜蛋白质の寿命やその分解过程を解析することのできるツールであることを実証することに成功しました。従来の手法に比べて简便で、极めてナチュラルな条件で蛋白质の解析ができるため、膜蛋白质の细胞内での挙动や分解と深く関わる疾病のメカニズムの解明に役立つと期待されます。
蛋白质の可视化技术の模式図
补:遗伝子工学的手法を用いた骋贵笔融合蛋白质の作製と観察、产:天然に存在する蛋白质を可视化する尝顿础滨化学
详しい研究内容について
天然に存在する蛋白質の可視化?寿命解析手法の開発に成功 -蛋白質の寿命に関わる疾病のメカニズムの解明に期待-
书誌情报
[DOI]
Takayuki Miki, Sho-hei Fujishima, Kazuhiro Komatsu, Keiko Kuwata, Shigeki Kiyonaka, and Itaru Hamachi
"LDAI-Based Chemical Labeling of Intact Membrane Proteins and Its Pulse-Chase Analysis under Live Cell Conditions"
Chemistry & Biology Volume 21, Issue 8, pp. 1013–1022, 14 August 2014