2014年8月21日
友永雅己 霊長類研究所准教授、松沢哲郎 同教授、マリスカ クレット アムステルダム大学研究員らの共同研究グループは、ヒトとチンパンジーの情動認知の能力を非侵襲の視線追従装置を用いて比較しました。その結果、ヒトもチンパンジーも、同種の瞳の拡大縮小映像(特に自種の瞳の変化)に対応して観察者の瞳孔のサイズが変化することがわかりました。
本研究成果は、2014年8月21日(日本時間)に、米国のオンライン総合科学誌「PLoS ONE」に掲載されることになりました。
研究者からのコメント
友永准教授
これまでにも、チンパンジーにおいてはあくびの伝染や外部のリズムに対する同期など、同调に関する研究成果が、私たちの研究室から生み出されてきました。
今回の研究成果は、これらに加えて、情动的な侧面(瞳孔サイズの変化)においても同调が见られることを初めて示したものであり、今后、さらにデータを蓄积するとともに、その発达过程なども视野に入れてさらなる検讨を进めていきたいと考えています。
概要
私たちの行うコミュニケーションは、さまざまな要因で変动することが知られています。特にヒトの场合、相手の目を见つめて、时には相手のうなずきに合わせて自分もうなずいたりします。また、自分では気がつかないうちに、相手のしぐさとの同调が起きたりします。最近の研究ではまばたきなども同调することがわかっています。このように、行动の同调は、わたしたちの円滑な社会的コミュニケーションを支える基盘となっていることが多くの研究から明らかになってきました。その一方で、なぜこのような同调とコミュニケーションの関係が成立するようになってきたか、つまり、このような同调行动が进化してきた背景についての研究はまだまだ立ち遅れているのが现状です。
そこで本研究グループは、ヒトとチンパンジーの情动认知の能力を非侵袭の视线追従装置を用いて比较しました。両种にそれぞれ瞳の中の「瞳孔」が拡大?缩小する动画像を提示し、その际の観察者の瞳孔のサイズの変化をこの装置を用いて记録しました。
その结果、ヒトもチンパンジーも、同种の瞳の拡大缩小映像に対応して観察者の瞳孔のサイズが変化することがわかりました。ヒトでは、このような瞳孔のサイズの同期がすでに知られており、他者の情动などの内的状态への感受性(共感と言ってもよいでしょう)が関连しているといわれています。今回の研究成果は、(1)チンパンジーにおいても瞳孔サイズの同期现象が生じること、(2)ヒト、チンパンジーともにこの同期现象が同种の瞳に限定されて生じること、という二つの点で兴味深いものであると言えます。同期现象は、このような瞳孔サイズに限定されるものではなく、さまざまな侧面で见られることがわかっています。また、このような同期现象は、社会的コミュニケーションの基盘となり得るものです。今回の结果は、社会的コミュニケーションの进化を考える上でも、重要な知见であるといえます。
チンパンジーでの実験の様子(模式図)
详しい研究内容について
チンパンジーもヒトも瞳の変化に敏感 -ヒトとチンパンジーに共通の情動認知過程を非侵襲の視線追従装置で解明-
书誌情报
[DOI]
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Mariska E. Kret, Masaki Tomonaga, Tetsuro Matsuzawa
"Chimpanzees and Humans Mimic Pupil-Size of Conspecifics"
PLoS ONE Volume 9 Issue 8 e104886 August 20, 2014
掲载情报
- 京都新聞(8月23日 25面)、産経新聞(8月21日夕刊 8面)、中日新聞(8月21日 3面)、日本経済新聞(8月21日夕刊 14面)および毎日新聞(8月21日 27面)に掲載されました。