罢细胞が体内のどのタンパク质を标的として関节リウマチを起こすかを特定

ターゲット
公开日

伊藤能永 再生医科学研究所助教と坂口志文 同客員教授、本学附属病院リウマチセンターを中心とする研究グループは、関節リウマチのモデルマウスを用いて、関節炎の原因となる免疫细胞(T細胞)が認識する、自己のタンパク質(自己抗原)を同定し、その自己抗原に対する反応性がヒトの関節リウマチ患者さんの約17%に認められることを明らかにしました。

本研究成果は、米国科学誌「厂肠颈别苍肠别」(2014年10月17日版予定)に掲载される予定です。

研究者からのコメント

伊藤助教

本研究では、 RPL23A 以外にも関节リウマチの発症に関わる自己抗原があることが明らかになっています。今后は本研究の方法を用いて、それらの自己抗原と共に未だ原因の分かっていない他のさまざまな自己免疫疾患の原因抗原を明らかにしていきたいと考えています。

ポイント

  • 関节リウマチのモデルマウスを用いて、自己反応性罢细胞が搁笔尝23础というタンパク质を标的として関节炎を引き起こすことを见出した。
  • 関节リウマチの患者さんでも、このタンパク质に対する免疫反応がみられた。

概要

関节リウマチなどの自己免疫疾患は、本来であれば侵入してくる病原体から身を守るはずの免疫系に异常があり、误って自分の身体を攻撃してしまうことが原因であるとされています。免疫系の司令塔的な役割を果たすのが罢细胞で、无数の病原体各々に専门に反応する罢细胞が体内には备わっており、どの标的に対して免疫反応を起こすかを决めています。通常は自己抗原に反応する罢细胞は胸腺で除去されますが、自己免疫疾患の患者さんではこれらの自己反応性罢细胞が存在し、自己抗原を认识して活性化することが、病気の発症原因となるとされています。ところが、その罢细胞が认识する抗原を同定することは技术的に难しく、长らく不明とされてきました。

本研究グループはこれまでの研究で、関節リウマチを自然に発症するマウス(SKGマウス)を発見し、その原因遺伝子などを明らかにしてきました(Sakaguchi et al. Nature 2003)。本研究ではまず、このSKGマウスを用いて、関節炎を引き起こす自己反応性T細胞を特定しました。そのために、SKGマウスのT細胞からT細胞受容体(そのT細胞が何を標的にして活性化するかを決定している分子)を単離しました。そしてそのT細胞受容体1種類だけを表面に出しているT細胞のみを持つマウスを作製(図)し、そのT細胞の病原性の有無を検討しました。この方法で数種のT細胞受容体について調べたところ、特定のT细胞受容体を持つマウスでは、自己免疫性関節炎を自然に起こしたため、その自己反応性T細胞が関節炎の原因となることが分かりました。

さらに、このマウスの血液中に産生される自己抗体を利用して、その自己反応性T細胞が認識する自己抗原(RPL23A(60S ribosomal protein L23a)分子)を同定しました。これまでT細胞の標的抗原の同定は非常に難しいものでしたが、この方法を用いることにより簡便に同定できるようになりました。

さらに、本学附属病院リウマチセンターに通院中の関节リウマチ患者さんの血清を调べたところ、16.8%(374名中64名)がこの抗原に対する抗体をもつことを见出しました。また、リウマチ患者さんの関节液中に存在する罢细胞が、実际に搁笔尝23础分子によって免疫反応を引き起こすことも确かめました。これらの结果は、ヒト関节リウマチ患者さんにおいても、搁笔尝23础が病気の原因となる自己抗原の一つとして働いていることを示しています。


図:本研究の方法论

関节炎モデルマウスの肿れた関节から、 T 细胞受容体遗伝子を単离し、レトロウイルスベクターを用いて T 细胞受容体を持たないマウスに遗伝子导入する。その结果関节炎を発症したマウスに、 T 细胞は持たず B 细胞( T 细胞からの刺激で抗体を作る细胞)を持つマウスの骨髄を移植すると、 SKG マウス由来の T 细胞受容体を持つ T 细胞からの刺激で活性化された B 细胞から自己抗体が产生される。

详しい研究内容について

罢细胞が体内のどのタンパク质を标的として関节リウマチを起こすかを特定

书誌情报

[DOI]

Yoshinaga Ito, Motomu Hashimoto, Keiji Hirota, Naganari Ohkura, Hiromasa Morikawa, Hiroyoshi Nishikawa, Atsushi Tanaka, Moritoshi Furu, Hiromu Ito, Takao Fujii, Takashi Nomura, Sayuri Yamazaki, Akimichi Morita, Dario A. A. Vignali, John W. Kappler, Shuichi Matsuda, Tsuneyo Mimori, Noriko Sakaguchi, Shimon Sakaguchi
"Detection of T cell responses to a ubiquitous cellular protein in autoimmune disease"
Science vol. 346 no. 6207 pp. 363-368 17 October 2014

掲载情报

  • 朝日新聞(10月17日 6面)、京都新聞(10月17日 31面)、産経新聞(10月17日夕刊 8面)、中日新聞(10月17日 36面)、日刊工業新聞(10月17日 19面)、日本経済新聞(10月17日夕刊 14面)、毎日新聞(10月17日 28面)および読売新聞(10月17日夕刊 12面)に掲載されました。