山道真人 白眉センター特定助教は、笠田実 東京大学総合文化研究科大学院生と 吉田丈人 同准教授らのグループとの共同研究により、被食者である藻類(クロレラ)とその捕食者である動物プランクトン(ワムシ)からなる人工的な生態系を実験室内に構築し、遺伝的多様性が、生態系を構成する種の個体数と進化にどのような影響を与えるかについて観測しました。その結果、遺伝的多様性のわずかな違いが、進化や個体数変化のあり方を大きく変えることで、生態系に大きな影響を与える可能性を新たに発見しました。
本研究成果は、米国科学アカデミー纪要「笔狈础厂」に10月20日13时(米国东部时间)に掲载されました。
研究者からのコメント
これまで「遗伝的多様性の质」はあまり注目されてきませんでしたが、本研究によって、遗伝的多様性の质的な违いが生态系に大きな影响を与えることがあると示されました。つまり、生态系をより深く理解するには、构成する生物种という単位だけでなく、种内に见られる遗伝的多様性を含めて生物を捉える必要があります。
生物多様性の保全は国内外において重要な社会目标となっていますが、种の保全だけでなく种内の遗伝的多様性を保全する意义の一つが新たに明らかとなりました。また、感染症の対策や野生生物の管理において、遗伝的多様性を考虑する重要性が今まで以上に示されたと言えます。
ポイント
- 生物のもつ遗伝的性质のわずかな违いが进化や个体数変化のあり方を変えることで、生态系に大きな影响を与える可能性を、プランクトンを用いた実験生态系により初めて実証
- 生物多様性の要素のうち遗伝的多様性については、その重要性を里付ける学术的知见が乏しいが、今回の研究により遗伝的多様性のもつ新しい影响が明らかに
- 种の保全だけでなく、种内の遗伝的多様性を保全する意义の一つが新たに明らかとなり、今まで以上に遗伝的多様性の考虑が重要となる可能性を指摘
概要
生物は个体ごとに异なる遗伝子を持っており、种内に遗伝的多様性があります。遗伝的多様性により、生物は素早く进化することが可能であり、生物多様性の重要な要素と考えられています。しかし、遗伝的多様性が生态系に与える影响の理解は进んでおらず、生物多様性保全の国际的な议论においても、遗伝的多様性の重要性を里付ける学术的知见が乏しいことが课题となっています。また、感染症流行への対策や野生生物や水产资源の管理においても、遗伝的多様性のもつ影响の理解は重要ですが、十分には进んでいません。
そこで本研究グループは、プランクトンを用いた実験生态系による室内実験と、数理モデルによる现象理解を组み合わせて実施し、その结果、遗伝的性质のわずかな违いが进化や个体数変化のあり方を大きく変えることで、生态系に大きな影响を与える可能性を新たに発见しました。
今回の研究成果は、遗伝的多様性の重要な一面を新たに発见したものであり、国内外の生物多様性保全を里付ける学术的知见として利用されることが期待されます。また、社会の身近な问题である感染症や生物管理の现场において、遗伝的多様性の考虑を一层强く求めることにもつながることが期待されます。
実験生态系を构成する藻类(クロレラ)と、それを捕食する动物プランクトン(ワムシ)。この写真では、藻类はすべて同じように见えるが、重要な性质に遗伝的な违いがある。
详しい研究内容について
书誌情报
[DOI]
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Minoru Kasada, Masato Yamamichi, and Takehito Yoshida
"Form of an evolutionary tradeoff affects eco-evolutionary dynamics in a predator–prey system"
PNAS, published ahead of print October 21, 2014