服部裕子 野生動物研究センター特定助教、友永雅己 霊長類研究所准教授、松沢哲郎 同教授らの研究グループは、ヒトとチンパンジーは音のリズム音に対して類似した傾向を示すことを明らかにしました。電子キーボードを複数回タッピングすることを訓練した後、様々な速さのリズム音を聞かせると、各自が音を聞いていないときに行ったタッピングの速さに近いリズム音を聞いた時に、その音にあわせてタッピングする傾向があることがわかりました。リズム音に対する自発的な傾向は、ヒトが複雑な話し言葉を使えるようになるずっと以前の、チンパンジーとの共通祖先の段階で既に獲得されていたことが示唆されます。
本研究成果は、7月1日(米国東部時間)付けにて、米国科学誌「PLOS ONE」誌に掲載されました。
研究者からのコメント
服部研究员
ダンスや合唱といった音楽活动は、集団の结束を高め、さまざまな感情を共有できるヒト独自のコミュニケーションですが、それを支える认知的基盘は既に600万年前から获得されていました。今后は、その后分岐したほかの霊长类种が、そうした基盘をどのようにコミュニケーションに取り入れているのかを明らかにしていきたいです。
概要
音楽に合わせて歌ったり踊ったりする、という行為は世界中の多くの文化で取り入れられており、ヒトがグループ内でのつながりや协力を高めるために进化させたユニークなコミュニケーション方法だと言われています。また、ヒトは生まれて早い时期から音楽のリズムを认识するなど、非常に音のリズムに対して感受性が高いことが知られていますが、どういった进化的起源を経てそうした能力が获得されてきたのはあまりよくわかっていません。そこで、ヒトと系统発生的に最も近い种であるチンパンジーを対象に、音のリズムに対する反応をヒトと直接比较しました。
霊长类研究所のチンパンジー?アイ、アユム、パルを対象に実験を行いました。まず、光ナビゲーション机能のついた电子キーボードを用いて、1オクターブはなれた二つのキーを30回タッピングするように训练しました。训练の后、タッピングの最中に、様々なテンポの音刺激を呈示し、どのテンポの音に対して、タッピングのタイミングを合わせるのかを调べました。その结果、自分のタッピングの速さに近いテンポのリズム音を闻いた时に、ヒトもチンパンジーも自発的に音のリズムに合わせてタッピングする倾向があることがわかりました。
自発的なタッピングの间隔とリズム音に対する反応
详しい研究内容について
书誌情报
[DOI]
【碍鲍搁贰狈础滨アクセス鲍搁尝】
Yuko Hattori, Masaki Tomonaga and Tetsuro Matsuzawa
"Distractor Effect of Auditory Rhythms on Self-Paced Tapping in Chimpanzees and Humans"
PLOS ONE 10(7): e0130682 Published: July 1, 2015
- 日本経済新聞(7月6日 13面)に掲載されました。