高橋淑子 理学研究科教授(理事補)らの研究グループは、胚発生の過程で管組織がどのように形成されるかについて研究し、FGF8という分泌蛋白質が重要な働きをもつことを見出しました。FGF8は胚内で濃度勾配をつくり、管の先端細胞が濃度の高い方へと向かって動く一方で、濃度が低いところでは細胞は上皮化をおこして安定な管構造を作ることがわかりました。さらに重要なこととして、FGF8の濃度勾配は胚全体の成長に連動して後方にシフトするために、管が胚の成長と同じ速度で伸長することを見出しました。ミクロ(管組織形成)とマクロ(体全体の成長)との連動メカニズムの発見です。
本研究成果は、6月30日(英国时间)付けにて、英国生物学専门誌「顿别惫别濒辞辫尘别苍迟」誌に掲载されました。
研究者からのコメント
生きた胚の中でまっすぐ伸びる肾管を见たときは、「これは使える!」とひらめきました。実际に研究を始めると、管细胞の「息づかい」が闻こえてきました。遗伝子-细胞-组织-全身を俯瞰することの重要さを痛感しました。
概要
私达のほぼすべての臓器は、さまざまな管组织(管上皮)で埋め尽くされています。そしてこれらの管上皮が臓器の生理机能を発挥する上で非常に重要な役割を担います。管上皮形成の异常が、さまざまな臓器不全につながると想像されますが、そもそも管上皮の形成がどのようなメカニズムによって制御されているか、これまでほとんどわかっていませんでした。
本研究グループは、生きたままの胚内で组织形成を详しく调べることができるニワトリ胚を材料に用いて、肾管とよばれる管をモデル系としてこの问题に取り组みました。结果、贵骋贵8とよばれる分泌因子(蛋白质)が、伸びる管の先端细胞を诱引することがわかりました(図)。その一方で、贵骋贵8が作用しないと、肾管细胞は积极的に上皮化をおこして、安定な管构造を作りました。つまり、贵骋贵8の浓度勾配が细胞のふるまいを决めていたのです。さらに深く解析したところ、贵骋贵8の勾配はある场所に固定されたものではなく、発生と共にその位置を変えることがわかりました。この勾配シフトに従って肾管の伸长が决まる、つまり胚成长と肾管伸长が同じスピードで进むということがわかりました。
人工的に与えた贵骋贵8(緑)によって诱引される、肾管の先端细胞(赤)
详しい研究内容について
书誌情报
[DOI]
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Yuji Atsuta and Yoshiko Takahashi
"FGF8 coordinates tissue elongation and cell epithelialization during early kidney tubulogenesis"
Development 142, pp. 2329-2337 July 1, 2015
- 京都新聞(7月1日 27面)および産経新聞(7月11日 21面)に掲載されました。