「しびれ」による痛みのメカニズムを解明 -糖尿病や血流障害によるしびれ治療薬の開発に期待-

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公开日

宗可奈子 薬学研究科博士課程学生、中川貴之 医学部附属病院准教授、金子周司 薬学研究科教授らの共同研究グループは、マウスを使ってしびれのモデルを作成し、痛みの発生メカニズムを調べたところ、感覚神経にある痛みセンサ分子TRPA1が低酸素により過敏化し、しびれによる痛みを引き起こすことを明らかにしました。

本研究成果は、英国科学誌「サイエンティフィックレポーツ」誌(电子版)に掲载されました。

研究者からのコメント

左から宗博士课程学生、中川准教授、金子教授

今后は、罢搁笔础1阻害薬が実际にこれらの症状を改善するかを调べます。また、人间で「しびれ」を起こす糖尿病、闭塞性动脉疾患、抗がん剤などの病态动物モデルを作ることで、さらに有効性の高い治疗薬を见いだせる评価系を确立していく予定です。

なお、本研究は2006年度に始まった6年制薬学教育制度の1期生が、続く4年间の大学院博士课程で実施しました。本研究は6年制薬学科で约半年间、病院や薬局で学んだ実务実习の経験を活かし、临床现场で起きる问题点(アンメットニーズ)を基础研究で解决しようとした内容として、新しいタイプの薬学研究を展开できる学生が育ってきた一つの証と考えています。

概要

「しびれ」という感覚は、正座の后など谁しもが経験したことのある嫌な感覚ですが、しびれは糖尿病、末梢神経障害、末梢闭塞性动脉疾患などの病気のほか、ある种の抗がん剤による治疗でも起こります。しかし、しびれに効く薬はまだ开発されていません。

そこで本研究グループはマウスの片侧の后ろ足をタコ糸で缚ることで血流を止め、15分后から60分后にそのタコ糸を切ることで、后ろ足の血流を再开させて、しびれを模しました。このように后ろ足を缚ったマウスでは、后ろ足の感覚がやがてなくなり、血流を再开させた直后には足の里を激しく舐める行动が见られました。このマウスの行动は、长时间の正座后に足の感覚がなくなってしまうと同时に、足にビリビリとした强い痛みが走る感覚によく似た现象と考えています。

血流が一定時間止まった後に血流が再開すると、大量の活性酸素と呼ばれる体にダメージを与えたり、痛みを引き起こしたりする物質が発生することが知られています。本研究グループは、感覚神経でこの活性酸素の存在を検知するセンサとして機能しているtransient receptor potential ankyrin 1(TRPA1)に着目しました。その結果、血流再開後に生じる足を舐めるような強いしびれは、活性酸素を捉えて消失させてしまう薬や、TRPA1阻害薬、またはTRPA1の遺伝子をなくすことにより弱まり、本研究グループの仮説通り、血流再開後に発生した活性酸素が感覚神経のTRPA1を刺激することにより、痛みにも近い強いしびれ感が発生したものと考えています。


しびれによる痛みの発生

血流低下が低酸素による罢搁笔础1の过敏化を起こし、続いて血流再开で発生する活性酸素が罢搁笔础1を强く活性化して痛み情报が脳に伝わる

详しい研究内容について

书誌情报

[DOI]
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Kanako So, Yuna Tei, Meng Zhao, Takahito Miyake, Haruka Hiyama, Hisashi Shirakawa, Satoshi Imai, Yasuo Mori, Takayuki Nakagawa, Kazuo Matsubara & Shuji Kaneko
"Hypoxia-induced sensitisation of TRPA1 in painful dysesthesia evoked by transient hindlimb ischemia/reperfusion in mice"
Scientific Reports 6, Article number: 23261 Published online: 17 March 2016

  • 京都新聞(3月18日 25面)、産経新聞(3月18日夕刊 10面)および毎日新聞(3月26日 30面)に掲載されました。