アルミニウム化合物による常温?常圧での水素分子活性化反応を発見 -安価で豊富な元素を用いた水素化反応触媒や水素貯蔵材料の開発に期待-

ターゲット
公开日

笹森貴裕 化学研究所准教授、時任宣博 同教授、吾郷友宏 茨城大学准教授、松尾司 近畿大学准教授らの研究グループは、低酸化状態のアルミニウム化学種であるアルミニウム間二重結合化合物(ジアルメン)を用いて、常温?常圧の状態で水素分子を活性化し、水素化アルミニウム化合物を得ることに成功しました。

本研究成果は、2016年8月16日に化学雑誌「Angewandte Chemie International Edition」電子版に掲載されました。

研究者からのコメント

今回の成果は、ありふれた元素であるアルミニウムが水素分子の结合を切断し、活性化する力を持つことを示したものです。今后は、アルミニウムによって活性化された水素を使った触媒的な有机合成反応や、アルミニウムを用いた水素吸蔵材料といった、アルミニウムと水素の相互作用を基盘とした化学技术の开発を目指します(吾郷)。

概要

水素をエネルギー源とした水素社会の実现が世界的に求められていますが、水素は石油などとは异なり常温?常圧では気体であるため、水素を大量かつ安全に贮蔵?运搬する技术の开発が重要となっています。

水素贮蔵技术の一つとして、水素を可逆的に吸収?放出する水素吸蔵合金と呼ばれる金属材料の研究が盛んに进められているものの、効率的な水素吸蔵には希土类(レアアース)元素や贵金属といった希少?高価な金属元素が必要となっています。また、水素を化合物に导入する水素添加反応は、石油の接触改质、メタノール合成、アンモニア製造、医薬品合成など多方面で利用されていますが、これらの化学反応では反応性が低い水素分子を活性化するために、贵金属元素で构成される触媒が必须となっています。

このような水素吸蔵材料や水素添加触媒に用いられる希少金属元素を、地殻に豊富に存在し环境调和性も高いユビキタス元素で代替できれば、元素资源の枯渇に起因するリスクを低减し、持続可能な循环型社会の构筑に贡献できると考えられます。そうした背景から、希少元素代替戦略に基づいた研究において、鉄、ケイ素やアルミニウムといった豊富かつ低毒性のユビキタス元素が注目されてきましたが、アルミニウムを水素分子活性化反応に用いた例はほとんどありませんでした。

今回の研究では、研究グループが开発した高反応性アルミニウム化合物の新规発生法を活用することで、室温?1気圧という穏和な条件で水素分子を活性化し、アルミニウムヒドリド化合物の合成に成功しました。

図:アルミニウムヒドリド化合物の分子构造

详しい研究内容について

书誌情报

【顿翱滨】


Koichi Nagata, Takahiro Murosaki, Tomohiro Agou, Takahiro Sasamori, Tsukasa Matsuo and Norihiro Tokitoh. (2016). Activation of Dihydrogen by Masked Doubly Bonded Aluminum Species. Angewandte Chemie International Edition, 55.