新しい构造材料「高エントロピー合金」の强度の実験的决定に成功

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乾晴行 工学研究科教授、岡本範彦 同助教、E. P. George 米国オークリッジ国立研究所教授らの研究グループは、CrMnFeCoNi系等原子量高エントロピー合金の多結晶材から1~10μm程度の単結晶を微細加工し、圧縮変形試験を実施することでバルク強度を評価することに世界に先駆けて成功しました。その結果、合金を構成するニッケルの10倍以上もの高い強度を示すことを明らかにしました。

本研究成果は、2016年10月24日にオンライン科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。

研究者からのコメント

本研究で用いたマイクロピラー试験法は、従来、纯金属の强度のサイズ依存性を纯粋に学术的な観点から研究するために开発されたものですが、高エントロピー合金以外にも単结晶作製が困难な金属材料やセラミックス材料にも适用できるものであり、広范な构造材料の强度の基础的理解および材料开発に役立つと期待されます。また、高エントロピー合金の固溶强化(异种元素を加え强化すること)の解釈を推し进めることにより、希薄二元系合金にしか适用できなかった従来の固溶强化理论を、元素种や溶质浓度に依らないユニバーサルな固溶强化理论に発展させられることが期待されます。

本研究成果により、高エントロピー合金の结晶中には非常に大きな结晶格子歪(ひずみ)が内在することが示唆されましたが、これを実証するために、厂笔谤颈苍驳-8の放射光エックス线回折などの実験手法を用いて结晶格子歪量を実测します。

概要

多种类の元素を等原子量もしくはほぼ等原子量含む合金は近年「高エントロピー合金」と名付けられ、优れた高温强度、极めて遅い拡散速度などの特异な物理特性を示すため、学术的にも工业的にも注目されています。中でも、等原子量高エントロピー合金(颁谤惭苍贵别颁辞狈颈合金)は、温度低下とともに强度が増加するだけでなく、延性および破壊靭性が剧的に向上するという、従来金属材料では考えられないような力学特性を示します。

高エントロピー合金は异种元素が高浓度に固溶しているため、固溶强化によって强度が高くなっていると考えられます。しかし、现在用いられている固溶强化理论は溶质が数%程度で2种の金属からなる合金を前提としているため、等原子量合金では合金の强化量を予测?评価することは困难です。またバルク単结晶が得られないため、高エントロピー合金の强度を実际に确かめることはできませんでした。

そこで本研究グループは、颁谤惭苍贵别颁辞狈颈系等原子量高エントロピー合金の多结晶材から任意の结晶方位を有する结晶粒を选び、そこから1~10μ尘程度のサイズの微小な角状単结晶试料を集束イオンビーム装置で微细加工し、ナノインデンテーション装置を用いて室温で圧缩変形试験を行いました。

その结果、试料サイズが小さくなるとともに强度がべき乗则に従って増加することが分かりました。さまざまな金属について、试料サイズが约20~30μ尘のときの强度がバルク强度に相当することが一般的に知られていることから、このべき乗则の近似曲线を20~30μ尘まで外挿することにより、颁谤惭苍贵别颁辞狈颈系高エントロピー合金のバルク强度が38±5惭笔补であると见积もりました。これは构成する纯金属(ニッケル)の10倍以上もの高い强度です。

圧缩轴方位に関わらず试料サイズが小さくなるとともに、强度がべき乗则に従って増加している(図左)。既存の固溶强化理论を高エントロピー合金に直接适用することは不可能だが、颁谤惭苍贵别颁辞狈颈五元系合金を仮想的な2元系合金に単纯化することにより既存理论を适用(=準用)して强度を见积もると、本研究で得られたバルク强度の実测値に及ばないことがわかった(図右)。

详しい研究内容について

书誌情报

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Norihiko L. Okamoto, Shu Fujimoto, Yuki Kambara, Marino Kawamura, Zhenghao M. T. Chen, Hirotaka Matsunoshita, Katsushi Tanaka, Haruyuki Inui, Easo P. George. (2016). Size effect, critical resolved shear stress, stacking fault energy, and solid solution strengthening in the CrMnFeCoNi high-entropy alloy. Scientific Reports, 6: 35863.