小川誠司 医学研究科教授、牧島秀樹 同講師、宮野悟 東京大学教授、Torsten Haferlach ミュンヘン白血病研究所教授、Jaroslaw P. Maciejewski クリーブランドクリニック教授らの研究チームは、次世代シーケンサー(DNAを構成するヌクレオチドの塩基配列を決定する手法)と理化学研究所に設置されたスーパーコンピュータ「京」を用いて、慢性の骨髄異形成症候群から急性白血病を起こす遺伝子異常を詳細に明らかにしました。これらの遺伝子異常は、骨髄異形成症候群の低リスクから高リスク症例への進行、および二次性急性白血病進展を予測するマーカーとしてスクリーニングに用いられることが期待されます。
本研究成果は、2016年12月20日午前1時に英国の学術誌「Nature Genetics」に掲載されました。
研究者からのコメント
左から、小川教授、牧島講師、吉里哲一 医学研究科助教
今回の研究では、これまでになく多く(2000例以上)の骨髄异形成症候群および二次性急性白血病において、全エクソン解析を含む网罗的遗伝子解析を行いました。白血病発症には遗伝子変异の蓄积が必须であることを明白に証明し、白血病进展に重要な二つのタイプの遗伝子群を明らかにしました。これらの结果は、100例以上の症例において、时系列で复数回の解析を行うことにより确认され、今后前向きの追试を行う予定です。
概要
急性骨髄性白血病(础惭尝)は代表的な血液がんの一つであり、血液のもとになる造血细胞のゲノムに异常が生ずることによって発症するとされています。近年ゲノム异常を解析する技术が飞跃的に进歩したことに伴い、白血病细胞の详细なゲノム解析によって、その発症に関わる遗伝子変异の全体像が明らかにされつつあります。しかしながら、白血病が诊断される前にゲノム解析を行うことが通常は难しいため、白血病発症に至るまでどのゲノム异常が、どのような顺番で起こるかに関しては、これまでほとんど理解されていません。
一方、骨髄异形成症候群(惭顿厂)は、高齢者に多い血液がんの一つであり、数年にわたって慢性の造血障害(造血干细胞が机能障害を起こし、血液细胞の减少と形态の异常を认める)を起こしたのち、急性骨髄性白血病を発症することが知られています。いったん急性白血病を起こすと急激に进行し早期に死亡します。したがって、骨髄异形成症候群の慢性の経过中に急性白血病の兆しを検出しその発症を早く予测することは、できるだけ白血病细胞が少ないうちに白血病に対する治疗を开始することにつながり、治疗効果が高まることが期待されます。
详しい研究内容について
书誌情报
【顿翱滨】
Hideki Makishima, Tetsuichi Yoshizato, Kenichi Yoshida, Mikkael A Sekeres, Tomas Radivoyevitch, Hiromichi Suzuki, Bartlomiej Przychodzen, Yasunobu Nagata, Manja Meggendorfer, Masashi Sanada, Yusuke Okuno, Cassandra Hirsch, Teodora Kuzmanovic, Yusuke Sato, Aiko Sato-Otsubo, Thomas LaFramboise, Naoko Hosono, Yuichi Shiraishi, Kenichi Chiba, Claudia Haferlach, Wolfgang Kern, Hiroko Tanaka, Yusuke Shiozawa, Inés Gómez-Seguí, Holleh D Husseinzadeh, Swapna Thota, Kathryn M Guinta, Brittney Dienes, Tsuyoshi Nakamaki, Shuichi Miyawaki, Yogen Saunthararajah, Shigeru Chiba, Satoru Miyano, Lee-Yung Shih, Torsten Haferlach, Seishi Ogawa & Jaroslaw P Maciejewski. (2016). Dynamics of clonal evolution in myelodysplastic syndromes. Nature Genetics.
- 日本経済新聞(12月21日 42面)に掲載されました。