西栄美子 霊長類研究所博士課程学生、今井啓雄 同准教授らの研究グループは、ニホンザルの甘味受容体の機能を評価する実験系を確立することに成功しました。行動実験と機能測定の結果から、ニホンザルはヒトでは甘みを感じられない程度の麦芽糖でもショ糖(スクロース)と同じくらいの甘みを感じることが分かりました。ヒトの甘味受容体の機能測定システムは外国の企業が特許を持っているため国内の企業が利用することが困難でしたが、今回開発したニホンザルの甘み受容体測定システムを利用することで、国内企業による新たな甘味料発見や応用につながることが期待されます。
本研究成果は、2016年12月16日午後7時に英国の学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。
研究者からのコメント
左から、今井准教授、西博士课程学生
大学院生の西さんが3年间かけて、やっとニホンザル受容体の甘味受容体の応答がとれるようになりました。石の上にも3年といいますが、新しい测定系の开発など研究には忍耐と工夫、そしてチャレンジが必要です。
本测定系の开発により、さらに新奇の糖类の発见や甘味受容体の进化机构の解明が期待できます。
概要
甘味感覚は糖类等の炭水化物の指标として动物の味覚に备わっています。ヒトにとって最も甘いと感じられる糖类は果糖(フルクトース)やショ糖(スクロース)等であり、ブドウ糖(グルコース)やブドウ糖が二つくっついた麦芽糖(マルトース)は甘味が弱いとされてきました。
本研究グループは、ニホンザルの甘味受容体(罢础厂1搁2/罢础厂1搁3)の机能测定系を确立することに成功した结果、ニホンザルはヒトが感じられない程度の麦芽糖の甘味もショ糖の甘味と同じくらいに感じることを示しました。また、行动実験の结果、ニホンザルは麦芽糖もショ糖と同程度に好むことを示しました。
行动実験によりニホンザルが属するマカカ属のサルは麦芽糖の甘味をより感じられることが示唆されていましたが、今回の研究はこれを分子レベルで証明したことになります。マカカ属のサルがもつ頬袋の役割ともあわせて、霊长类の甘味感覚の进化に一石を投じる成果です。また、分子レベルで糖の认识に関与する部位を探索した结果、これまでに知られていた部位(罢础厂1搁2の细胞外领域)以外に罢础厂1搁3も糖の认识に関与している可能性が示されました。
図:ショ糖溶液と麦芽糖溶液に対する甘味感受性比较.
ヒトの甘味受容体(础)は10尘惭以上のショ糖溶液には応答を示したが、麦芽糖溶液には応答しなかった。一方ニホンザルの甘味受容体(叠)は10尘惭以上のショ糖溶液と麦芽糖溶液に対し同程度の応答を示した。さらにニホンザル4个体に行った行动実験(颁)でも甘味溶液と水を同时に提示した场合、甘味溶液摂取率(=甘味溶液摂取量/(甘味溶液+水)摂取量)は甘味溶液がショ糖溶液の时と麦芽糖溶液の时で同程度であった。
详しい研究内容について
书誌情报
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【碍鲍搁贰狈础滨アクセス鲍搁尝】
Emiko Nishi, Kei Tsutsui & Hiroo Imai. (2016). High maltose sensitivity of sweet taste receptors in the Japanese macaque (Macaca fuscata). Scientific Reports, 6:39352.
- 朝日新聞(12月17日夕刊 8面)、京都新聞(12月17日 23面)、産経新聞(12月17日 26面)、中日新聞(12月17日 29面)および毎日新聞(12月21日 27面)に掲載されました。