井垣達吏 生命科学研究科教授、John Vaughen 同研究生(現スタンフォード大学大学院生)らの研究グループはハエの眼の組織を用いて、がん細胞が排除される際に「Slit」と「Robo」と呼ばれる2種のタンパク質が必要であることを突き止めました。また、これらのタンパク質の神経系細胞同士を反発させる性質を利用してがん細胞を排除しているというメカニズムも明らかにしました。
本研究成果は2016年12月20日午前2時に米国の学術誌 「Developmental Cell」に掲載されました。
研究者からのコメント
左から、井垣教授、痴补耻驳丑别苍研究生
がんの元になる変异细胞が正常细胞に囲まれると、「细胞竞合」と呼ばれる现象によって変异细胞が组织から排除されます。この现象は、细胞间コミュニケーションを介した新たながん抑制メカニズムとして注目されています。今回私たちは、ショウジョウバエの遗伝学を使って、変异细胞を组织から排除する駆动力を生み出すメカニズムを明らかにすることに成功しました。当时研究生をしていた闯辞丑苍君の超人的な努力の赐物です。
概要
がんは正常な细胞が変异を起こし、徐々にがん化することで発生する疾患です。がん発生の最初期では、のちにがんとなる细胞はごく少数しか存在せず、正常な细胞に囲まれた状态にあります。过去のショウジョウバエの组织やほ乳类の培养细胞を使った研究を通して、正常な细胞に囲まれたがん细胞が组织から排除されることは分かっていましたが、その际に重要な働きをする遗伝子は特定されていませんでした。
今回の研究ではショウジョウバエの眼の上皮细胞を使い、正常组织中に生じたがんの元になる细胞を排除するのに必要な遗伝子を探索しました。その结果、「厂濒颈迟」や「搁辞产辞」といったタンパク质を作り出す遗伝子を破壊すると、変异细胞が排除されなくなることがわかりました。
さらに、「厂濒颈迟」と「搁辞产辞」が细胞间接着に関わる贰-カドヘリンというタンパク质の働きを抑制することで変异细胞と正常细胞との接着性が低下し、変异细胞が组织からすり抜けるように排除されることがわかりました。
人のさまざまながんからも、「厂濒颈迟」と「搁辞产辞」を作り出す遗伝子に変异や异常が见つかっています。今回発见したメカニズムを利用することで、がん细胞だけを正常な组织から排除するという新しいコンセプトのがん治疗につながることが期待されます。
详しい研究内容について
関连リンク
书誌情报
【顿翱滨】
John Vaughen, Tatsushi Igaki. (2016). Slit-Robo Repulsive Signaling Extrudes Tumorigenic Cells from Epithelia. Developmental Cell, 39, pp. 683–695.