東樹宏和 人間?環境学研究科助教、山道真人 白眉センター特定助教らの研究グループは、生態系の中で「ハブ」として機能する生物を数百?数千種の中から探り出す新たな研究手法を開発?提案しました。この成果は、生態系内に存在する無数の生物種の中から「生態系に大きな影響を及ぼし得るため、優先的に研究すべき種」を選定する作業を大幅に効率化すると期待されます。
本研究成果は、2017年1月24日に英国の科学誌「Nature Ecology&Evolution」に掲載されました。
研究者からのコメント
左から、东树助教、山道特定助教
现在でも10亿の人たちが十分な食粮を得られない中、世界人口が増え続けています。世界中で台头する自国优占主义の背景にも、「地球上の资源が有限である」ことをすでに知ってしまった私たち一人一人が持つ潜在意识が働いているのかもしれません。このような时代だからこそ、地球上の资源を有効に利用して共存する道を探っていかなければいけません。今回の研究成果は、”笔别谤蝉辫别肠迟颈惫别”(视点/観点)という形式の论文として出版されました。世界各国の研究者と连携しつつ、地球规模の课题を解决する方向性を日本から発信していけたらと思います(まだまだ発信力が足りませんが)。
概要
地球上の人口が増え続ける中、食粮を安定的に供给する上で、また、进行する数々の环境问题に対処する上で、生态系に関する知识がますます重要性を増してきています。しかし、无数の生物种が复雑に関係し合う生态系を研究する际、「まずどの种から研究すべきか」决めること自体に困难が伴います。
本研究ではまず、生物种间の関係における「物理的接触」に着目し、顿狈础情报に基づく相互作用の情报を大量に得る技术を基本としました。例えば、肉食动物の粪や腹のサンプルには、肉食动物自体の顿狈础とともに食べた饵种の顿狈础も含まれています。こうした顿狈础に関する情报を集めれば、食う-食われる関係や共生?寄生関係に関する大规模な「ネットワーク构造」を推定することができます。このネットワークの情报があれば、どの种がより多くの他种と関わっている「ハブ」なのか、把握することができます。
しかし、たとえ1ヶ所の生态系でハブであったとしても、别の地域の生态系では、他の种がハブになっているかもしれません。そこで本研究グループは、「幅広い地域の生态系において繰り返しハブとして出现する种」を选别する方法を提案しました。この手法で定义される「ハブ生物种」は、幅広い地域に渡って多数の生物种の生态や进化に影响を及ぼしている可能性があり、今后重点的に研究することで、生态系全体の动态に関する理论や応用技术が発展すると期待されます。
従来の研究では、个々の研究者が限られた生物群のみを対象としてきており、生态系全体の构造に関する知见が限られてきました。しかし、生物であれば必ず持っている顿狈础の情报を用いることで、一人の研究者が生态系全体の动态を研究できる时代が拓かれつつあります。今回提案した手法を用いれば、対象となる生物群集の全体构造を研究の初期段阶において一挙に解明し、数百?数千の生物种の中から重点的に研究予算と労力を投入すべき种を选ぶことができます。今后は、この手法で选别された种が実际に重要な働きをしているのか、検証研究を展开していく予定です。
図:分布域の広い种の选别(左)とハブ种(メタ群集ハブ)の绞り込み(右)
详しい研究内容について
书誌情报
【顿翱滨】
Hirokazu Toju, Masato Yamamichi, Paulo R. Guimar?es Jr., Jens. M. Olesen, Akihiko Mougi, Takehito Yoshida and John N. Thompson. (2017). Species-rich networks and eco-evolutionary synthesis at the metacommunity level. Nature Ecology & Evolution, 1:0024.