川畑貴裕 理学研究科准教授、市川真也 同修士課程学生、越川亜美 同修士課程学生、久保野茂 理化学研究所客員主管研究員、岩佐直仁 東北大学准教授らの研究チームは、ビッグバンによる元素合成で起こる 7 叠别+苍→ 4 贬别+ 4 贬别反応の断面积(量子力学的な粒子が衝突し、散乱ないしは反応を起こす确率を表す量)を初めて测定することに成功しました。ビッグバン元素合成で生成される元素のうち、 7 尝颈は理论的に予测されているよりも少ない量しか観测されていません。「宇宙リチウム问题」と呼ばれるこの问题を解く仮説の一つとして、今回取り上げた反応が高い确率で起こっている可能性が指摘されていましたが、今回の测定结果によりこの仮説では説明が难しいことが分かりました。
本研究成果は、2017年2月3日午後2時に米国の学術誌「Physical Review Letters」に掲載されました。
研究者からのコメント
左から、川畑准教授、市川修士课程学生、越川修士课程学生
川畑:理化学研究所の久保野客員主管研究員が発案された研究テーマを、本学学部学生の卒業研究として実施しました。3学年20名の学生諸君の努力が、世界的に注目を集める研究成果として結実したことを嬉しく思います。残念ながら、 「宇宙リチウム問題」を解決するには至りませんでしたが、本研究の成果は、原子核反応率の見直しや、標準ビッグバン模型を超える新しい物理の探索など、宇宙リチウム問題へのさらなる研究を動機づけることになると思います。
市川:学部生のうちにこれほど意义深い実験を行え、それが学术论文という形になったことがとても嬉しいです。大学院でも成果が出せるように、これからも研究に全力を尽くしていきます。
越川:学生実験の成果が論文誌に掲載されることになり、非常に嬉しく思います。 実験のデザインからビームタイム、実験後のデータ解析や学内外の成果発表に至るまで、学生が主体となって取り組んできたこともあり、感慨もひとしおです。指導教員や大学院生のサポートがあってこそできた研究です。このような貴重な経験ができたことに感謝します。
概要
多くの物理学者は、今から约140亿年前におこったとされる「ビッグバン」によって、宇宙が诞生したと考えています。ビッグバン理论によると、宇宙开闢の约10秒后から20分后にかけて「ビッグバン元素合成」がおこり、水素、ヘリウム、リチウムなどの軽い元素が生成されました。宇宙初期における軽元素の生成量について、観测による推定値とビッグバン元素合成计算による予测値を比较することは、宇宙创生のシナリオを明らかにする上で极めて重要な知见をもたらします。
水素とヘリウムの同位体については、生成量の観测推定値と理论予测値がよく一致している一方で、 7 尝颈については、生成量の観测推定値が理论予测値の约3分の1でしかないという重大な不一致が知られています。この不一致は「宇宙リチウム问题」と呼ばれ、ビッグバン理论に残された深刻な问题として世界中の研究者の関心を集めています。
この问题を解く仮説の一つとして、 7 叠别+苍→ 4 贬别+ 4 贬别反応が高い确率で起こっている可能性が指摘されていました。しかし 7 叠别と苍(中性子)がともに短寿命の不安定核であるため、この反応を测定することは容易ではありません。
そこで本研究グループは、逆反応である 4 贬别+ 4 贬别→ 7 叠别+苍反応の断面积を测定する手法を着想し、大阪大学核物理研究センターの施设を用いて実験を実施しました。
その结果から、详细钓り合いの原理(原子核反応の时间反転不変性から导かれる性质で、顺方向の反応断面积と逆方向の反応断面积は、スピン多重度や状态密度などの运动学的条件を除けば厳密に等しいという性质)を用いて 7 叠别+苍→ 4 贬别+ 4 贬别反応の断面积を决定することに成功しました。
本研究によって初めて测定された 7 叠别+苍→ 4 贬别+ 4 贬别反応の断面积は、これまでビッグバン元素合成の理论计算に広く用いられていた推定値より约10倍も小さい値であり、宇宙初期において中性子が 7 叠别に衝突して2つの 4 贬别に分解する反応の寄与は非常に小さいことが明らかになりました。
本研究では、共同利用?共同研究拠点である大阪大学核物理研究センターより、大学の枠を超えた教育用ヒ?ームタイムの提供を受けました。
详しい研究内容について
书誌情报
【顿翱滨】
【碍鲍搁贰狈础滨アクセス鲍搁尝】
T. Kawabata, Y. Fujikawa, T. Furuno, T. Goto, T. Hashimoto, M. Ichikawa, M. Itoh, N. Iwasa, Y. Kanada-En'yo, A. Koshikawa, S. Kubono, E. Miyawaki, M. Mizuno, K. Mizutani, T. Morimoto, M. Murata, T. Nanamura, S. Nishimura, S. Okamoto, Y. Sakaguchi, I. Sakata, A. Sakaue, R. Sawada, Y. Shikata, Y. Takahashi, D. Takechi, T. Takeda, C. Takimoto, M. Tsumura, K. Watanabe and S. Yoshida. (2017). Time-reversal measurement of the p-wave cross sections of the 7Be(n,α)4He reaction for the cosmological Li problem. Physical Review Letters, 118(5): 052701.
- 朝日新聞(2月14日 31面)に掲載されました。