古川修平 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)准教授、北川進 同拠点長?教授、川野竜司 東京農工大学特任准教授、竹内昌治 神奈川科学技術アカデミーグループリーダーらの研究グループは、二つの電流値を持つ人工イオンチャネルの合成に世界で初めて成功しました。二孔チャネル(TPC)と呼ばれる、細胞膜中に存在するイオンチャネル膜タンパク質の人工的な合成に近づく成果です。
本研究成果は、2017年3月10日午前2时に米国の学术誌「颁丑别尘」に掲载されました。
研究者からのコメント
古川准教授
多面体构造を利用することで、异なる二つの电流値を与える人工イオンチャネルの合成に成功しました。现状では、この电流値の入れ替えはランダムにおこりますが、电流の入れ替え、电流の翱狈/翱贵贵を外部からのインプットにより制御可能な分子を合成することで、イオンの流れを自在に制御できるようになると考えられます。また、実际の细胞膜に埋め込むことで、生物の机能を制御できるようになると考えられます。最终的な目标としては、イオンチャネルが関与するさまざまな疾患を调べるシステムへの応用も期待されます。
概要
细胞膜中に存在するイオンチャネルは、细胞膜を挟んで细胞の中と外を行き来するイオンの流れ(膜电流)を制御することで、生体内でのエネルギー活动の本质を担う重要な膜タンパク质です。一方で、非常に复雑なイオンチャネルの构造や机能を人工的に合成した化合物で再现し、细胞活动を制御しようとする研究は、细胞生物学と化学の间にある大きな境界领域であり、复雑な化合物を合成する化学者にとっては大きな梦でもあります。
本研究グループは、生体内にも存在する、「罢笔颁」と呼ばれる复数の电流値を示すイオンチャネルの部分的な机能の再现に成功しました。具体的には、立方八面体という正叁角形八つと正方形六つの入り口があり、中心に大きな孔を有する多面体构造を持つ分子を合成しました。これをマイクロデバイス中に再现した人工细胞膜の中に埋め込み、単一分子レベルでのチャネル电流计测を16个并列に可能な「ハイスループット计测」により评価したところ、正叁角形の入口、正方形の入り口をイオンが通るとそれぞれ别の电流値を示すことが明らかになりました。すなわち、二つの入り口を切り替えることで、二つの异なるチャネル电流を示す罢笔颁のような人工イオンチャネルの合成に成功しました。
図:3顿プリンタで作成した人工イオンチャネルの模型(左)と、チャネルを通过するイオンの流れを计测するハイスループット电流计测システム(右)
详しい研究内容について
书誌情报
【顿翱滨】
Ryuji Kawano, Nao Horike, Yuh Hijikata, Mio Kondo, Arnau Carné-Sánchez, Patrick Larpent, Shuya Ikemura, Toshihisa Osaki, Koki Kamiya, Susumu Kitagawa, Shoji Takeuchi and Shuhei Furukawa. (2017). Metal-Organic Cuboctahedra for Synthetic Ion Channels with Multiple Conductance States. Chem, 2(3), pp. 393–403.
- 京都新聞(3月10日 29面)に掲載されました。