石本健太 白眉センター特定助教らの研究グループは、ミクロの世界での水の流れを表す式(ストークス方程式)を使って、ヒト精子の運動とその周りの液に現れる特徴的なパターンを見出しました。
本研究成果は、アメリカ物理学会の学術誌「Physical Review Letters」(2017年3月24日号)に掲載されました。
研究者からのコメント
石本特定助教
今回の研究成果の意義は、複雑な精子の運動をうまく「粗視化」する手法を見出したことにあります。 精子の運動は生体内で多機能にふるまい、複雑ながらも洗練された仕組みを持っているように思います。数学を道具として用い、運動や力学の観点から「精子の旅」を覗いてみることで、この仕組みの理解に近づきたいと考えています。
本研究成果のポイント
- 精子周囲の液体の流れを表す式を解くことで、実験で観测された精子の泳ぎを再现できる
- 精子周りに生じる流れのパターンから、精子运动を表す简単な数式を见出した
- 生体内の精子の运动を理解するのに数理的なアプローチが有効であることを示唆
概要
生命の诞生はひとつの精子と卵の出会いからはじまります。しかし、その前に精子は他の多くの精子たちとの「竞争」に胜たなければならない???この精子の旅の物语はどこまでが本当なのでしょうか。本研究グループは、精子の泳ぎに周りの液の流れを表す式からアプローチすることで、精子の旅を覗いてみたいと考えました。
ヒトの精子の顕微镜映像から取得した情报をもとに、周りに生じる流れの式を解析し、精子の运动をコンピュータ上で再现することに成功しました。また、周りの流れの様子を同じ式から计算してみると、 复雑な流れの中にも 一定のパターンがあることがわかりました。このパターンをもとに精子の运动を捉え直してみると、精子の运动にも尾をひねりながら押したり引いたりする特徴的なリズムが潜んでいることに気づきました。
このリズムを、流れの方程式で记述することで、精子の运动を表す简単な数式を见出すことに成功しました。今后はこの数式を使って、生体内を想定した复雑な环境下での精子の运动を调べたいと考えています。
方程式から计算された流れの様子
详しい研究内容について
书誌情报
【顿翱滨】
Kenta Ishimoto, Hermes Gadêlha, Eamonn A. Gaffney, David J. Smith, and Jackson Kirkman-Brown. (2017). Coarse-Graining the Fluid Flow around a Human Sperm. Physical Review Letters, 118(12), 124501.
- BBC News(3月20日)、The Japan Times(3月25日 3面)に掲載されました。