飛騨天文台の新観測装置、太陽からの高速噴出現象観測に成功 -地球を襲う「太陽嵐」予報システムの構築に向けて-

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公开日

一本潔 理学研究科教授、石井貴子 同研究員、柴田一成 同教授らの研究チームは、2016年4月末に飛騨天文台SMART望遠鏡へ新設した新装置Solar Dynamics Doppler Imager(SDDI)を用いて、太陽のフィラメント(太陽のHα線像で黒く見える筋。太陽の縁では空を背景に明るく見え、プロミネンスと呼ばれる)放出現象の観測に成功しました。フィラメント放出はときに大停電を引き起こすこともある太陽嵐と密接な関係を持つ現象です。

本研究成果は、2017年4月15日付でSpringer Nature社の学術誌「Solar Physics」に掲載されました。

研究者からのコメント

左から、一本教授、柴田教授、石井研究员

これから11年(=太阳活动周期)粘り强く観测を続け、成果をあげていきたいと思います。

概要

フィラメント放出は大規模なコロナの質量放出(Coronal Mass Ejection:CME)を伴い、それが地球にぶつかると磁気嵐やオーロラ、時には地上の送電線に異常な電流を誘導して大停電を引き起こすことがあります。

本研究グループは、太阳から高速に飞び出すフィラメント放出现象を観测することができる装置厂顿顿滨を、2016年4月末に飞騨天文台厂惭础搁罢望远镜に新设しました。これによって最大400办尘/秒という猛スピードで喷出するフィラメントの运动を、世界で初めて完全に捉えることができるようになりました。

この新しい装置は、太陽面の爆発を監視して現代社会に災害をもたらす「太陽嵐」の到来をいち早く予報するシステムの開発を目指し、2016年5月4日に初のフィラメント高速運動の観測に成功して以来、定常観測を続けています。2016年7月7日には、Hα-8A(370 km/秒)の画像でも噴出するフィラメントが確認できました。最近では、2017年4月2日に西の縁で発生したCMEを伴う噴出現象を観測しました。

図:太阳からのフィラメント放出运动を捉える飞騨天文台厂惭础搁罢望远镜(左)と2016年7月7日および2017年4月2日の喷出现象(右)。

详しい研究内容について

书誌情报

【顿翱滨】

Kiyoshi Ichimoto, Takako T. Ishii, Kenichi Otsuji, Goichi Kimura, Yoshikazu Nakatani, Naoki Kaneda, Shin'Ichi Nagata, Satoru UeNo, Kumi Hirose, Denis Cabezas, Satoshi Morita (2017). A New Solar Imaging System for Observing High-Speed Eruptions: Solar Dynamics Doppler Imager (SDDI). Solar Physics, 292:63.

  • 産経新聞(4月15日夕刊 8面)、中日新聞(4月15日 29面)、日本経済新聞(4月14日 30面)および毎日新聞(4月19日 27面)に掲載されました。