森井孝 エネルギー理工学研究所教授、中田栄司 同准教授らの研究グループは、あらかじめ顿狈础ナノ构造体に设定した位置を読み取り结合するモジュールを作成し、复数种类の酵素を狙った场所へ1分子ずつ正确に并べることに成功しました。本研究成果により、自在に酵素を組み合わせ、より複雑な連続反応の高効率化や新しい人工代謝経路を可能にする「分子コンビナート」の創製が期待されます。
本研究成果は、2017年5月18日に米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」オンライン速報版に掲載されました。
研究者からのコメント
今回の研究では、モジュール型アダプターの种类を増やすことで顿狈础ナノ构造体上に3种类の酵素を1分子ずつナノメートル精度の距离で并べることができるようになりました。本研究の成果を応用して、今后さらにモジュール型アダプターの种类を増やすことで、より复雑な多段阶反応を「分子コンビナート」で実现できます。また、単に复数の酵素を混ぜ合わせただけでは进行しないような多段阶の反応が「分子コンビナート」で达成できると期待できます。さらには、细胞内の连続する代谢反応を効率よく细胞の外で再现するだけでなく、生物にはできない反応を组み合わせた人工代谢反応を実现することも可能だと考えています。
本研究成果のポイント
- あらかじめ顿狈础ナノ构造体に设定した位置を読み取り结合するモジュールを作成し、复数种类の酵素を狙った场所へ1分子ずつ正确に并べることに成功
- 生体内の代谢反応のような、多段阶の反応を触媒する复数种类の酵素を自在に配置した反応场「分子コンビナート」を创ることに成功
- 単纯に酵素を混ぜ合わせたよりも高効率な多段阶反応の进行を达成。空间配置を変えるとさらに反応効率が高まることを确认
- 开発した技术を用いて自在に酵素を组み合わせ、より复雑な连続反応の高効率化や、単に酵素を混ぜ合わせただけでは达成できない、新しい人工代谢経路を可能にする「分子コンビナート」の创製を期待
概要
细胞の中は雑然としているようでありながら、酵素などの分子が、さながら製品を効率よく生み出すためのコンビナートのように、整然と并んでいます。この「分子コンビナート」を细胞の外で构筑することができれば、効率のよい物质生产システムとしての利用が期待できます。分子コンビナートを试験管で构筑するには、段阶的な反応が効率よく连続して进むように、ナノメートルのサイズの酵素を1分子ずつ、决まった场所に并べることが必要です。そのために、それぞれの酵素を决まった位置に高い精度で并べる足场を用意する必要があります。
今回の研究では、足場の構築にDNAによって成形されるナノ構造体「DNAオリガミ」を利用しました。DNAオリガミには、様々な配列のDNAを番地として導入することができます。これまでの研究で、DNAオリガミに導入した特定の「番地」へ酵素を運ぶための案内役(アダプター)の開発を行ってきました。特定のDNA配列にのみ結合するタンパク質をアダプターとして利用し、目的の酵素にアダプターを融合することで、DNAオリガミ上の決まった番地に酵素を並べることに成功しています。さらに、ほぼ100%の割合で決まった番地に安定に配置できる、モジュール型アダプター(特定の基質と共有結合を形成することができるタグタンパク質とDNA結合性タンパク質を融合したもの)を開発しました。 しかし、これまでは1種類のモジュール型アダプターだけしか開発されていなかったため、多段階反応の再現に必要ないくつもの種類の酵素を狙った場所に並べることは困難でした。
そこで本研究グループは、モジュール型アダプターを构成する顿狈础结合性タンパク质とタグタンパク质を3种类ずつ用意し、それらを组み合わせた9种类のモジュール型アダプターを设计しました。それらの中から、狙った番地だけに迅速かつ100%近くの収率で安定に配置できる、3种类のモジュール型アダプターを选びました。顿狈础ナノ构造体上の番地に配置されたモジュール型アダプターを、実际に原子间力顕微镜で観察すると、これら3种类のモジュール型アダプターは、理论上の上限値の90%以上が顿狈础ナノ构造体の决められた番地に配置されていました。また、モジュール型アダプターがどの番地に近づきやすいか、そして、决められた番地に安定な结合によって配置される速度を解析することで、决められた番地にのみ安定に配置できるモジュール型アダプターの设计原理を见出しました。
さらに、新たに开発したモジュール型アダプターを利用して、キシロースからキシリトール、キシリトールからキシルロース、そしてキシルロースからキシルロース-5-リン酸への代谢反応を触媒する3种类の酵素を并べた「分子コンビナート」を构筑しました。
図:今回の研究で作成した分子コンビナート
キシロース→キシリトール→キシルロース→キシルロース-5-リン酸の多段阶反応を高効率に行う。
详しい研究内容について
书誌情报
【顿翱滨】
Thang Minh Nguyen, Eiji Nakata, Masayuki Saimura, Huyen Dinh and Takashi Morii (2017). Design of Modular Protein-Tags for the Orthogonal Covalent Bond Formation at Specific DNA Sequences. Journal of the American Chemical Society, 139(25), 8487–8496.