「元史」「明史」から浮かび上がる13世紀から17世紀の太陽活動 -隋から清までの正史を横断した太陽記録調査が完成-

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早川尚志 文学研究科修士課程学生(現?大阪大学博士課程学生)、玉澤春史 理学研究科博士課程学生、磯部洋明 総合生存学館准教授らの研究グループは、 中国の正史である「元史」と「明史」に記録されているオーロラと太陽黒点の記録を調査し、13世紀から17世紀にかけての太陽活動を検討しました。その結果、「元史」からはオーロラと思われる記述を20件、「明史」からはオーロラ10件、太陽黒点と考えられる記述を26件発見し、その分布が年輪の炭素同位体比などから復元される太陽活動の長期傾向と一致することを究明しました。過去の成果も含めると隋から清までの長期の「観測データ」が整理できたことになります。

本研究成果は、日本天文学会の学術誌「Publications of the Astronomical Society of Japan」に掲載される予定です。

研究者からのコメント

左から、磯部准教授、玉泽博士课程学生、早川修士课程学生

当时の太阳活动を検讨するには史料的な限界もあるため、今后は同时期に他地域で记録されている同様の天文现象に関する记述の调査も进めていきます。

概要

太阳系内最大の爆発现象である太阳フレアは时に地球の地磁気へ影响を与え、大规模な场合の被害総额は约2兆ドルに上るとの试算があるほどの新たな自然灾害となりつつあります。1859年に発生した観测史上最大の太阳嵐「キャリントン?イベント」ではハワイやカリブ海でもオーロラが确认されており、アメリカやヨーロッパの电报システムも被害を受けています。また、黒点数と気温の関係など太阳活动が地球の気候に影响を与えていることも分かっており、気候変动の観点からの注目も集まっています。

これら数百年に1度しか起きない极端な「宇宙天気」や太阳活动を検讨するうえで问题となるのが、近代的な観测データの観测期间不足です。望远镜による黒点観测の开始は17世纪初头であり、最长でも400年程度しか遡ることができません。歴史书の天文记録を用いた研究も行われてきましたが、长期的な太阳活动の変动に焦点を绞ったものや记録の蒐集が主であり、歴史文献と科学データの本格的な比较検讨はあまり行われてきませんでした。

そこで本研究グループは、まず中国正史の「元史」と「明史」のデータベースと刊本を照合して、当时の黒点の呼称である「黒子」、「黒気」やオーロラを意味する「赤気」といったキーワードが含まれる记述を抜き出しました。その后一つ一つの记述が黒点やオーロラを指したものなのか、太阳や地磁気の研究者と共に検讨を重ねました。その结果、発见された记述は、年轮から復元される太阳活动の长期的倾向と一致して记録されていたことが分った他、17世纪初头でのヨーロッパの黒点スケッチと中国正史の黒点记録の同时観测事例も特定することができました。

図:中国の天文占书「天元玉暦祥异赋」の黒点画像(国立公文书馆所蔵)

详しい研究内容について

书誌情报

【顿翱滨】

Hisashi Hayakawa, Harufumi Tamazawa, Yusuke Ebihara, Hiroko Miyahara, Akito Davis Kawamura, Tadanobu Aoyama, Hiroaki Isobe (2017). Records of sunspots and aurora candidates in the Chinese official histories of the Yuán and Míng dynasties during 1261–1644. Publications of the Astronomical Society of Japan, 69(4), 65.

  • 京都新聞(6月10日 29面)、科学新聞(6月30日 6面)に掲載されました。