新たな関节リウマチ治疗のターゲット分子としてのナルディライジン

ターゲット
公开日

※内容を一部修正しました。(2017年7月14日)

伊藤宣 医学研究科准教授、藤井貴之 同研究生、西英一郎 滋賀医科大学教授を中心とする研究グループは、ナルディライジンというタンパク質が関節リウマチ(体のあちこちの関節に炎症がおこり腫れて痛む病気)患者の関節液中で増加しており、ナルディライジンを欠損させたマウスでは関節リウマチに似た症状を持つ関節炎が軽くなることを発見しました。また、ナルディライジンの働きを妨げる薬剤を関節に注射すると、炎症を引き起こすTNF-αという物質の分泌が抑えられ、症状が軽くなることも分かりました。更なる研究によって、ナルディライジンを指標にした関節リウマチの早期診断や新たな治療薬の開発につながる可能性があります。

本研究成果は、2017年7月13日付で英国BMJグループの学術誌「RMD Open」に掲載されました。

研究者からのコメント

滋贺医科大学の西教授と长い间ナルディライジンの研究に取り组んできました。まだまだ関节リウマチは诊断や治疗にたくさんの课题が残されており、今回の研究成果が少しでも课题の解决につながればと考えています。今后も研究を継続し、成果をご报告したいと思います。

概要

滋贺医科大学のグループが研究を続けているナルディライジンというタンパク质は、これまでの研究で罢狈贵-αの分泌に関与することが分かっていました。しかし、罢狈贵-αが関与する病気の一つである関节リウマチにおける役割はまだ明らかではありませんでした。また、関节リウマチかどうか诊断する际の指标となる物质もまだ十分分かっていませんでした。

本研究では、京都大学医学部附属病院で関节手术を行った変形性関节症の患者17名と関节リウマチの患者20名、计37名の関节液を解析したところ、関节リウマチ患者の関节液には非常に多くのナルディライジンが含まれていることが分かりました。一方、変形性関节症患者の関节液にはほとんど含まれていないことも明らかとなりました。

加えて、ナルディライジンがないマウスに関节リウマチ様関节炎を発症させたところ、関节炎が弱くなり、その细胞からは罢狈贵-αの分泌が少なくなることが分かりました。さらに、ナルディライジンを阻害する薬を関节内に注射すると、関节炎が弱くなることが分かりました。

図:関节液中のナルディライジン(狈搁顿颁)浓度

(A)、(B) ナルディライジンとTNF-αの濃度は、関節リウマチ(RA)の関節液で多い。
(C)、(D) ナルディライジンの濃度は、TNF-αやCRP(炎症のマーカー)の濃度と関連がある。

书誌情报

【顿翱滨】

【碍鲍搁贰狈础滨アクセス鲍搁尝】

Takayuki Fujii, Eiichiro Nishi, Hiromu Ito, Hiroyuki Yoshitomi, Moritoshi Furu, Namiko Okabe, Mikiko Ohno, Kiyoto Nishi, Yusuke Morita, Yugo Morita, Masayuki Azukizawa, Akinori Okahata, Takuya Tomizawa, Takeshi Kimura and Shuichi Matsuda (2017). Nardilysin is involved in autoimmune arthritis via the regulation of tumour necrosis factor alpha secretion. RMD Open, 3(1), e000436.