細川隆史 理学研究科准教授、平野信吾 日本学術振興会海外特別研究員(テキサス大学オースティン校)、吉田直紀 東京大学教授らの研究グループは、「アテルイ」をはじめとするスーパーコンピューターを用いたシミュレーションを行い、ビッグバン後の超音速ガス流から太陽の34,000倍もの重さをもつ巨大ブラックホールが誕生することを明らかにしました。この巨大ブラックホールが成長することで、これまでの観測で見つかった最遠方の宇宙に存在する超大質量ブラックホール(モンスターブラックホール)の起源と成長を説明することができます。
本研究成果は、2017年9月29日午前3時に米国の科学誌 「Science」 オンライン版に公開されました。
研究者からのコメント
今回、宇宙初期のガスの超音速运动まで厳密に再现した初期宇宙进化のスーパーコンピューターシミュレーションを行うことで、超大质量ブラックホールのもととなる巨大ブラックホール诞生の过程を明らかにし、超大质量ブラックホールの出现をその観测数も含めて説明できることを确かめました。将来の远方宇宙観测により、さらに初期のブラックホールを発见することで、ブラックホール成长の様子が実际の観测から示されると期待されます。
本研究成果のポイント
- 巨大ブラックホールが诞生する新たな道筋をスーパーコンピューターシミュレーションにより明らかにした。
- ビッグバンが残した超音速ガス流から急速に成长する星が生まれ、最终的に太阳の34,000倍もの质量をもつ巨大ブラックホールへと进化することを示した。
- 本研究成果により、最近の観测で见つかった、最远方の超大质量ブラックホールの起源を説明することができる。
概要
近年、远方の宇宙探査により、宇宙年齢が数亿年という早期に存在した超大质量ブラックホールが次々と発见されています。太阳の数十亿倍もの超大质量ゆえにモンスターブラックホールと呼ばれますが、そのような早期にどのようにして诞生したのかは天文学上の大きな谜でした。その起源についてはいくつもの仮説が提案され、例えば宇宙で最初に诞生した第一世代の星、ファーストスターがその一生の最期に遗すブラックホールが成长するという説や、あるいは宇宙初期に巨大ガス云が一気に収缩して形成されるとする説が有力と考えられてきました。しかしどの説も太阳质量の数十亿倍にもなる超大质量ブラックホールの早期形成を自然に説明することはできず、さらにいくつかの物理机构の仮定が必要でした。
本研究グループは、ビッグバン后に残された超音速ガス流に着目し、スーパーコンピューターシミュレーションを用いてガスと宇宙を満たすダークマター(暗黒物质)の运动を追い、さらには乱流ガス云から原始星が诞生して急速に成长する様子を再现しました。太阳の数万倍もの质量をもつ乱流ガス云の中では、诞生した原始星へ向けて高速のガスが流れ込み続け、最终的にはガス云全体が中心星に取り込まれ、巨大なブラックホールへと変貌します。
このように、乱流ガス云の中で成长し太阳の34,000倍もの质量をもつようになった巨大星は、その一生の最期に同质量の巨大ブラックホールを遗します。本研究グループは新たに、ダークハロー(主にダークマターからなる密度の高い领域)の形成时期や超音速ガス流の速度分布を理论的に求め、超大质量ブラックホールのもととなる巨大ブラックホールが宇宙に现れる确率を见积もりました。その结果、これまでに発见された超大质量ブラックホールの観测数と一致することがわかりました。
図:シミュレーションより得られたブラックホール形成时のダークマター分布(背景)とガス分布(内侧下3パネル)
ダークマターが集积した巨大な「ダークハロー」が形成されるが、宇宙初期のガス流速度(図では右方向)が大きな领域では高速のガスを捉えきれず、抜け出てしまう。最终的にブラックホールを生み出すガス云も乱れた形状を保ちながら収缩する。(図提供:平野信吾)
详しい研究内容について
関连リンク
书誌情报
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Shingo Hirano, Takashi Hosokawa, Naoki Yoshida, Rolf Kuiper(2017). Supersonic gas streams enhance the formation of massive black holes in the early universe. Science, 357(6358), 1375-1378.
- 日刊工業新聞(9月29日 31面)および科学新聞(10月6日 4面)に掲載されました。