特定の分子にのみ反応する酵素の特徴を応用し精密有機合成を実現 -薬剤候補物質の効率的な合成へ-

ターゲット
公开日

松原誠二郎 工学研究科教授、浅野圭佑 同助教、米田直紀 同修士課程学生、藤井結稀 同修士課程学生、松本晃 同博士課程学生らの研究グループは、次世代の有機合成触媒として注目を集めている有機分子触媒を用いて、不斉炭素(四つ全て異なる置換基と結合している炭素原子)を二つ含む光学活性テトラヒドロピランと呼ばれる医薬品関連分子の高効率合成を達成しました。

本研究成果は、2017年11月9日午後7時に英国の科学誌「Nature Communications」に掲載されました。

研究者からのコメント

本手法によって、兴味が持たれながらも合成法の乏しさから入手困难であった医薬品関连分子を短工程かつ高纯度で供给することができます。さらにこれらを基点に様々な诱导体を合成する突破口を与えるもので、创薬研究などの高速化につながる基盘技术です。今后は、より多くの不斉炭素を含む复雑な环状分子を合成する手法に展开します。

概要

医薬品をはじめとする机能性分子には光学活性を持つ化合物が多く用いられています。光学活性化合物は右手と左手に例えられるように、その镜像が重ならず异なる分子になる化合物です。これら対になる化合物同士は生体内で异なる作用を持つことが多く、医薬品として利用するには片方の镜像异性体を高い纯度で合成することが必要です。

こういった化合物には光学活性を生み出す部分构造があり、その多くには不斉炭素が含まれています。不斉炭素は生体内での作用を决定付ける叁次元构造の础になり、分子に多くの机能をもたらします。高机能な医薬品分子には复数の不斉炭素を持つものも多く、未来の医薬品を探索するうえでこのような分子には関心が集まっていますが、それらを合成することは简単ではありません。特に、四つある置换基の全てが水素以外である四置换不斉炭素は、置换基间の大きさの差异などを识别しにくく、立体选択的に构筑することが最も难しい构造の一つです。有机化学ではこの问题の解决策として、触媒を利用した合成法を発展させてきました。

本研究では、生体内の酵素のモデルとしても扱われる光学活性有机分子触媒に、素早く形态を変化させながら存在する基质分子の特定の形态のみを认识させ、四置换不斉炭素を含む二つの不斉炭素を一挙に构筑しながら、光学活性テトラヒドロピランの合成を达成しました。酵素は特定の基质にのみ反応する性质があり、今回の研究ではその特性を生かしました。光学活性テトラヒドロピランは、多くの医薬品の母骨格として利用されています。この合成法により、これまで合成が困难であった医薬品候补分子を短工程で供给できることから、创薬研究などの高速化が期待できます。

详しい研究内容について

书誌情报

【顿翱滨】

【碍鲍搁贰狈础滨アクセス鲍搁尝】

Naoki Yoneda, Yuki Fujii, Akira Matsumoto, Keisuke Asano & Seijiro Matsubara (2017). Organocatalytic enantio- and diastereoselective cycloetherification via dynamic kinetic resolution of chiral cyanohydrins. Nature Communications, 8, 1397.