半導体ナノ粒子が光を電子へ変換する過程を解明 -高効率な太陽電池や光検出器への基礎メカニズム-

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公开日

田原弘量 化学研究所助教、金光義彦 同教授らの研究グループは、直径5~6ナノメートルの半導体ナノ粒子にレーザーパルス光を照射することで、光を吸収したナノ粒子内部の多数の電子が、量子力学的な相互作用により特殊な状態を作り出していることを初めて発見しました。

本研究成果は、2017年12月11日に米国物理学会誌「Physical Review Letters」のオンライン版に掲載されました。

研究者からのコメント

半导体ナノ粒子にレーザーパルス光を照射すると、マルチエキシトンと呼ばれる多数の电子と正孔(电子が抜けてできた空孔)が一体となった状态が作られますが、その生成直后の振る舞いはこれまで明らかになっていませんでした。本研究では、マルチエキシトンがコヒーレント状态という量子力学的な状态を作り出していることを明らかにしました。この発见はマルチエキシトンが持つ光-多电子変换过程を解明するものであり、ナノ粒子の量子効果を利用した太阳电池や光検出器の高効率化につながると期待されます。

概要

半导体ナノ粒子は化学合成によって作られるナノメートルサイズの微结晶です。高い発光効率を示すことが知られており、すでに色鲜やかな液晶ディスプレイの発光体として使用されています。ナノ粒子の多彩な色を作り出すのは「量子闭じ込め効果」と呼ばれる量子力学的な现象で、电子を数ナノメートルの领域に闭じ込めることで生じます。この量子闭じ込め効果を最大限に活かす研究として、光から电気エネルギーへの変换(光电変换)に利用する応用研究が世界的に进められています。特に、ナノ粒子では1つの光子から多数の电子を生み出すことができる「マルチエキシトン」という状态について研究が行われています。しかし、ナノ粒子が光を吸収して多数の电子を生み出す过程は直接的に観测することが难しく、これまで明らかになっていませんでした。

そこで本研究グループは、ナノ粒子の超高速な量子力学的変化を测定する手法を独自に开発し、ナノ粒子が光を吸収した直后の状态を観测することに成功しました。本研究では、照射する2本のパルス光の位相を制御することで、ナノ粒子内に作り出したマルチエキシトンの量子力学的な干渉効果を测定しました。

その结果、マルチエキシトンが生成された直后は、レーザー周波数に追従して振动する量子力学的な状态(コヒーレント状态)を作り出していることを初めて観测しました。さらに、マルチエキシトンを形成している电子と正孔(电子が抜けてできた空孔)の个数に応じて、レーザー周波数の1倍?2倍?3倍の周波数を持つ量子力学的な振动状态が生み出されることを世界で初めて発见しました。これらの量子状态は、1つの光子から多数の电子を生み出す駆动力になるので、ナノ粒子を光吸収体として利用した太阳电池や光検出器の高効率化につながると期待されます。本研究は、科学技术振兴机构戦略的创造研究推进事业颁搁贰厂罢の助成を受けて行われました。

図:レーザーパルス光を半导体ナノ粒子に照射すると、ナノ粒子内部に作られた多数の电子と正孔がレーザー周波数の1倍?2倍?3倍の周波数を持つ特殊な状态(コヒーレント状态)を形成することを発见した。

书誌情报

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Hirokazu Tahara, Masanori Sakamoto, Toshiharu Teranishi and Yoshihiko Kanemitsu (2017). Harmonic Quantum Coherence of Multiple Excitons in PbS/CdS Core-Shell Nanocrystals. Physical Review Letters, 119(24), 247401.