非造影?非侵袭の「光超音波イメージング技术」によって手掌动脉の可视化と血管形状の定量解析に成功

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戸井雅和 医学研究科教授、松本純明 医学部附属病院特定助教らの研究グループは、無被ばくで造影剤の使用無しに血管を高精細に画像化できる「光超音波イメージング技術」を用いて、20~50歳台の健常な男女を被験者とする探索的臨床研究を行いました。その結果、手掌動脈の極めて精細な3D画像が得られ、同技術により加齢に伴う手掌動脈の湾曲傾向を定量的に解析することに成功しました。

本研究成果は、2018年1月15日に学術誌Scientific Reportsのオンライン版で公開されました。

研究者からのコメント

左から、戸井教授、松本特定助教

光超音波イメージング技术は生体に安全な光を照射し、生体内にある光吸収体(ヘモグロビン)から生じる超音波を受信して画像化する技术です。

私たちはこれまで、この光超音波イメージング技术を用いて乳癌患者さんの肿疡関连血管イメージングを中心に研究を行ってきました。乳癌などの悪性肿疡では异常な血管の新生が惹起されます。また、糖尿病、循环器疾患、リウマチなどの胶原病関连疾患等では末梢血管の伤害をしばしば伴います。これらの病态においては血管の変化がキーとなっていることは明らかです。そこで私たちは多彩な疾患の病态形成に関连する血管の构造を非造影?非侵袭で画像化することが重要であると考えてきました。なぜなら、これまでの画像诊断装置で血管构造を精细に描出するためには造影剤が必要になりますが、そのような疾患に苦しんでおられる患者さんこそ、本来ならば造影剤などの侵袭は避けなければならない方であり、また、検诊での利用を考えた场合にも非侵袭であることは大切な条件と考えられるからです。

今回、健常者の手掌动脉を非造影?非侵袭で画像化できただけでなく、血管构造の详细な形态解析に耐えうる画像が得られたことには大きな意味があると考えられます。今后、光超音波イメージング技术は生体血管解析における有力なツールになり、様々な疾患の病态解析、治疗効果の分析、さらに新薬开発などにも寄与しうる画像モダリティになることが期待されます。

概要

血管は血液の通り道であり、生体全体に酸素や栄养を届けるために大切な器官です。加齢や疾患などによって、血管の构造が変化することが知られており、健常人と疾患者の血管形状比较により、生活习惯病などの疾患リスクを评価できる可能性があります。

これまでの血管イメージングでは、造影剤が必要であったり、被ばくのある齿线を用いたり、あるいは高価な惭搁滨検査を受けて画像を取得する必要がありました。一方で、造影剤が不要で侵袭のない超音波诊断装置に搭载されているドップラー画像によっても血流画像化が可能ですが、その解像度には限界がありました。このため、健常人での血管イメージングの研究はこれまであまり行われてきませんでした。

本研究グループは、生体の血管构造解析の第一段阶として、手掌の血管に着目しました。光超音波イメージング技术を用い、20~50歳台の健常な男女22名の手掌血管を撮像し、动脉が加齢に伴って湾曲する様子を科学的に画像化しました。主に解析した血管は、総掌侧指动脉(手のひらを縦に走る3本の动脉)と固有掌侧指动脉(亲指を除く各指の両侧8本の动脉)です。年齢阶层ごとにグループ分けして血管の形状を数値に落とし込み、统计解析を行った结果、加齢に伴って曲率が有意に大きくなっていることがわかりました。

本研究グループは、これまで光超音波イメージング技术を用いて乳癌の肿疡関连血管の画像化研究を行ってきました。装置の改良により血管の构造が精细に画像化されるようになっただけでなく、乳癌の研究で行ってきた解析のノウハウを応用し、血管の半自动抽出(トレーシング)技术を开発して血管の曲率を计算することができました。

今回の结果は生活习惯に起因する动脉硬化の様子を反映していると考えられます。局所の血管状态が全身性疾患の兆候、あるいは発病后はその进行度などを反映している可能性があります。また、先天性の血管変化などの性状の観察も可能と考えられます。本研究グループは引き続いてデータを蓄积し、データの信頼性を高めるとともに、健常血管、病的血管の鑑别法の検讨や新しい诊断手法の开発などを行う予定です。

図:光超音波イメージング技术を用いた手掌の血管画像

(左上)得られた光超音波像の惭滨笔(最大强度投影)画像、(右上)皮肤表面の深さに応じて着色した図(青が表皮近く、赤が深い部分にある血管)、(左下)表面近くの血管を画像上から削除し、深い位置にある血管を描出した画像、(右下)血管をトレーシングして形状解析に用いた図

详しい研究内容について

书誌情报

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Yoshiaki Matsumoto, Yasufumi Asao, Aya Yoshikawa, Hiroyuki Sekiguchi, Masahiro Takada, Moritoshi Furu, Susumu Saito, Masako Kataoka, Hiroshi Abe, Takayuki Yagi, Kaori Togashi and Masakazu Toi (2018). Label-free photoacoustic imaging of human palmar vessels: a structural morphological analysis. Scientific Reports, 8, 786.