金光義彦 化学研究所教授、山田琢允 同博士課程学生、阿波連知子 同研究員の研究グループは、ハロゲン化金属ペロブスカイト半導体の一種であるメチルアンモニウム塩化鉛(CH 3 NH 3 PbCl 3 )に、様々な波长のレーザー光を照射して発光测定を行うことで、その光学特性を解明しました。
本研究成果は、2018年2月1日(米国時間)に米国物理学会誌「Physical Review Letters」オンライン版に掲載されました。
研究者からのコメント
ハロゲン化金属ペロブスカイトは低コストかつ高品质の薄膜や単结晶を作製できるため、新しいフォトニクス材料として注目されています。ハロゲンの种类を変えることでバンドギャップエネルギーを幅広い范囲で比较的自由に操作させることができ、太阳电池、光検出器、発光ダイオードなどの様々なデバイスが作製できます。今回の研究により、この半导体の优れた光电特性が明らかとなり、特色あるフォトニクスデバイスの开発が加速するものと期待されます。
概要
ハロゲン化金属ペロブスカイト半导体は、ペロブスカイト构造という结晶构造を有する半导体の一种です。その中で、メチルアンモニウムイオン(颁贬 3 NH 3 + )などの有机物を含む有机无机ハイブリッドペロブスカイトは、比较的低温かつ简便な涂布プロセスで高品质な薄膜を作製できるため、低コストかつ高効率でフレキシブルな光デバイス材料として世界的に注目を集めています。特に、メチルアンモニウムヨウ化铅(颁贬 3 NH 3 PbI 3 )を用いた薄膜太阳电池の効率は既に22.7%まで达し、ぺロブスカイト太阳电池として実用化に向けた研究が盛んに行われています。
これまでは、ペロブスカイト半导体の中でも、光吸収と発光の色を决めるバンドギャップエネルギーが小さく、太阳电池に适した物质を中心として研究が行われてきました。一方で、ペロブスカイト半导体にはよりバンドギャップエネルギーの大きな(ワイドギャップな)半导体も存在しますが、それらの基础的な光学特性は十分に明らかになっていませんでした。
そこで本研究グループは、青色领域にバンドギャップエネルギーを持つワイドギャップペロブスカイト半导体であるメチルアンモニウム塩化铅(颁贬 3 NH 3 PbCl 3 )の単结晶および薄膜试料を作製し、発光励起スペクトル测定という手法を用いて基础光学特性の研究を行いました。この手法は光吸収させるレーザー光の波长を扫引しつつ発光スペクトルを测定する分光法で、物质の光吸収と発光の相関関係を明らかにすることができます。
测定の结果、この半导体の中では室温において电子と电子の空席(正孔)が一体となった状态(励起子)が存在していること、さらにその状态は自身が放出した光を再び吸収する过程を効率的に繰り返すこと(フォトンリサイクリング)が分かりました。励起子によるフォトンリサイクリング効果はこれまでの半导体では観测されなかった现象であり、本研究によってハロゲン化金属ペロブスカイトの新しい光学特性を明らかにしました。

図:メチルアンモニウム塩化铅(颁贬 3 NH 3 PbCl 3 )単结晶の写真(レーザー励起で発光させた场合)
详しい研究内容について
书誌情报
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Takumi Yamada, Tomoko Aharen and Yoshihiko Kanemitsu (2018). Near-Band-Edge Optical Responses of CH3NH3PbCl3 Single Crystals: Photon Recycling of Excitonic Luminescence. Physical Review Letters, 120(5), 057404.
- 日刊工業新聞(2月12日 14面)に掲載されました。