武田和行 理学研究科准教授、宇佐見康二 東京大学准教授らの研究グループは、光による核磁気共鳴(NMR)の新しい検出法を開発?実証しました。今回の光NMR検出法は、今後NMRや磁気共鳴画像(MRI)の感度をさらに高める道を開くであろうと期待されます。
本研究成果は、2018年2月2日午前0时に米国の科学誌「翱辫迟颈肠补」に掲载されました。
研究者からのコメント
核磁気共鸣(狈惭搁)は数ある分光法の中でも最も周波数の低い、ラジオ周波数の领域の电磁波信号を扱います。今回私たちは、狈惭搁信号を、周波数を7桁(1,000万倍!)アップコンバートして光に変换することに成功しました。そのカラクリは、あたかもある仕掛けが作动し、それが次の仕掛けのトリガーになり、この连锁によって最终的に何かを达成するルーブ?ゴールドバーグ?マシン(あるいはピタゴラ装置とも呼ばれる)のようです。私たちの研究の场合、物质中の原子核により电気回路に信号が生じ、电気信号が薄膜を揺さぶり、揺さぶられた薄膜は実は镜にもなっていて、レーザー光の跳ね返り具合に影响を与える、というプロセスでラジオ周波数の狈惭搁信号が光に変换されます。一连の现象の背后には量子力学?电磁気学?力学?光学的プロセスがあり、しかも光に化けた信号には测定物质の分子构造やダイナミクスなどの化学的情报を含ませることもできます。また、この研究を惭搁滨に応用できれば光変换された信号を用いて非破壊の画像诊断もできるはずです。异分野の共同研究者が力を结集させて未开の境界领域を攻めた点において、苦しくも大変楽しい研究活动ができました。共同研究者のみなさん、特に东大?宇佐见さんに感谢です!さて、この研究成果が果たしてルーブ?ゴールドバーグ?マシンのように、故意に无駄に长い道のりを経由して信号を伝达しているだけなのか?それとももっと深渊な科学的な示唆を含んでいるのか?まだ本当の答えは出ていませんが后者であると信じて、もうしばらく游んでみようと思います。
本研究成果のポイント
- 狈惭搁は、物理?化学?生物学において、物质の构造等を分析する强力なツールですが、信号が微弱であることが弱みであり、测定の感度を改善するための様々な试みが行われてきました。
- 本研究において、狈惭搁信号検出の原理として、电気?机械振动子?光のハイブリッド系を応用し、光による新しい狈惭搁の検出法を开発?実証しました。
- 本成果により、化学分析及び狈惭搁の原理を応用した惭搁滨诊断の高感度测定が期待されます。
概要
狈惭搁は、物质中の原子核が持つミクロな「磁石」が、物质の性质や构造を反映して振る舞う様子を捉えて物质を分析する有用な手段で、化学分析に威力を発挥しているだけではなく、狈惭搁の原理を応用した惭搁滨诊断は医疗现场に欠かせないツールとなっています。狈惭搁の信号は、原子核内の磁石の运动により発生する电気信号を増幅することで得られます。しかし、电気信号を増幅する际には必然的に新たな雑音が付け加わり、测定の感度が制限されてしまいます。
本研究グループは、电気-机械-光ハイブリッド量子技术(异なる2つ以上の量子系を统合させ1つの量子系としてみなし、量子情报を测定?制御する技术)を用いて、高周波电気信号をレーザー光へ変换することができる独自の狈惭搁実験システムを开発して、薄膜机械振动子を介した狈惭搁信号の光検出に初めて成功しました。今回のレーザー光狈惭搁信号検出法は、通常の狈惭搁や惭搁滨で测定?撮像されている対象にそのまま适用可能で、かつ信号の受信过程における雑音の混入を极めて少なくできるため、化学分析および惭搁滨诊断の高感度化に役立つことが期待されます。
図:核磁気共鸣の光検出法のイメージ図。试験管内の物质中の原子核が持つ「磁石」の运动が、発电机の原理により电気信号を発生。それがコンデンサーの电极に用いられている薄膜を揺さぶる。その薄膜の変位をレーザー光で検出する。左は金蒸着した窒化シリコン薄膜の拡大写真
详しい研究内容について
书誌情报
【顿翱滨】
Kazuyuki Takeda, Kentaro Nagasaka, Atsushi Noguchi, Rekishu Yamazaki, Yasunobu Nakamura, Eiji Iwase, Jacob M. Taylor, and Koji Usami (2018). Electro-mechano-optical detection of nuclear magnetic resonance. Optica, 5(2), 152-158.
- 日刊工業新聞(2月2日 21面)に掲載されました。