砂漠の洪水を灌漑用水に変える -ヨルダンの乾燥地で数理的最適戦略によるプロトタイプを運用-

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宇波耕一 農学研究科准教授、Osama Mohawesh ムタ大学(ヨルダン)教授の国際研究グループは、ヨルダンの乾燥地域において洪水を灌漑用水に変えるシステムのプロトタイプを構築し、厳密な数学的根拠に基づく最適戦略によって貯水池の運用を開始しました。

本研究成果は、2018年3月5日に国際学術誌「Stochastic Environmental Research and Risk Assessment」にオンライン掲載されました。

研究者からのコメント

海外の过酷な环境に研究目的の农业水利施设を构筑する试みはこれまでにもありましたが、その运用戦略について厳密な数学的方法论に基づいた検讨を行った例としては本研究が初めてになります。このような农业工学と数学の异分野协働により、経験値の合理性の解明や、过酷な环境条件下での水资源开発手法の体系化が、一层进んでいくことが期待されます。また、継続中の実証研究では、ナツメヤシが顺调に生育しており、研究の新たな展开と併せて大変楽しみな状况です。

概要

中东や北アフリカをはじめ世界全体に広く分布する乾燥地域においては、外来河川や化石地下水への过度の依存や塩类集积といった问题が顕在化し、过酷な环境の中で限定的な水资源を有効利用する灌漑农业を确立することが喫紧の课题となっています。同时に、このような乾燥地における突発的洪水による被害が拡大していると言われています。そのため、これらに対処するための灌漑システムが求められていました。

本研究グループは、砂漠の洪水を収集して贮水池に蓄え灌漑用水に変换するシステムを提案し、そのプロトタイプをヨルダンの乾燥地域に実际に构筑しました。このプロトタイプは、水理学や水文学、とくに数値流体力学の知见に基づいて设计、施工を行いました。

水资源利用工学と解析学の学际的研究の成果として、厳しい环境下での水资源开発において、本プロトタイプが実现可能な选択肢であることを确认しました。特に、ある种の偏微分方程式に対する「粘性解」の概念を用いることにより、ポンプの运転/停止切り替えのような滑らかでない最适运用戦略を取り扱うことが可能となりました。

図:ヨルダン现地に设置した広报バナー:プロトタイプ全景(左写真)、数値计算で近似的に得られた粘性解の一部(右中図)、ビニールハウスを改造した除塩プラント(右下写真)

详しい研究内容について

书誌情报

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【碍鲍搁贰狈础滨アクセス鲍搁尝】

Koichi Unami & Osama Mohawesh (2018). A unique value function for an optimal control problem of irrigation water intake from a reservoir harvesting flash floods. Stochastic Environmental Research and Risk Assessment, 32(11), 3169-3182.