七田芳則 名誉教授(理学研究科)?立命館大学客員教授、佐藤恵太 理学研究科研究員(現?岡山大学助教)、山下高廣 同助教、大内淑代 岡山大学教授らの研究グループは、神戸薬科大学、京都府立医科大学、大阪大学と共同で、光を受けてスイッチオンするのではなくスイッチオフする、興味深い動物の光センサータンパク質「Opn5L1」を発見し、そのきわめてユニークな性質を解明しました。
ヒトを含むほ乳类以外の脊椎动物は、この「翱辫苍5尝1」を脳内に持つことで、光センサーのオンとオフを环境に応じて巧みに使い分け、ヒトよりも多様な方法で光环境に対応していることが分かりました。恐竜时代に夜行性だったほ乳类が、なぜこの「翱辫苍5尝1」を失ったのかという谜の解明にもつながる成果です。
本研究結果は、2018 年3月28日に英国の学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。
研究者からのコメント
左から七田名誉教授、佐藤冈山大学助教、山下助教、大内冈山大学教授
动物は周りのものの形や色を认识する视覚から多くの情报を得ています。それ以外にも、光环境の変化から时刻や季节の认识などを行っていることが知られています。このような様々な光受容のために、动物は眼や脳などに光センサータンパク质(オプシン)を持っています。このようなオプシンは通常、视覚のロドプシンに代表されるように、光を受けてスイッチオンし生理机能を果たします。今回私たちは、光を受けてスイッチオフする兴味深い光センサーが脳内で机能することを発见しました。本研究から、动物が光を利用する多様な仕组みの理解が深まると期待されます。
概要
多くの动物は、上记の通り外界からの光を最初に受けて生体反応のスイッチを入れるオプシンと呼ばれる光センサータンパク质を持っています。オプシンは光を受けるためにタンパク质内部にレチナール(ビタミン础の诱导体)を持ち、光を受けるとレチナールの形を変化させてスイッチオンし、生理机能(例えば视覚)を発现します。そして、眼で働く视覚オプシンなどでは、光を受けて変化したレチナールは一旦捨ててスイッチオフの状态になり、新たなレチナールを取り込むことで次の光に対応します。
しかし本研究グループは、オプシンのうちニワトリの脳内で机能する「翱辫苍5尝1」が光を受けると逆にスイッチオフする兴味深い机能を持つことを确认しました。さらに、翱辫苍5尝1はスイッチオフしたあともレチナールを离すことなく保持し、また元の状态に戻ることがわかりました。このようなユニークな性质を持つオプシンの発见は本研究が初めてです。
翱辫苍5尝1はヒトを含むほ乳类は持たないものの鱼类から鸟类までの幅広い脊椎动物が持っていることから、これらの动物では光を受けてスイッチオンするオプシンと、スイッチオフする翱辫苍5尝1の両方を持つことで、ヒトよりも多様な方法で光环境に适応していることが解明されました。
図:眼で働く视覚のオプシンと脳で働く翱辫苍5尝1の性质の违い
眼で働く视覚のオプシンは、光を受けてスイッチオンする。
一方、脳で働く翱辫苍5尝1は、光を受けてスイッチオフする。
详しい研究内容について
书誌情报
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【碍鲍搁贰狈础滨アクセス鲍搁尝】
Keita Sato, Takahiro Yamashita, Hideyo Ohuchi, Atsuko Takeuchi, Hitoshi Gotoh, Katsuhiko Ono, Misao Mizuno, Yasuhisa Mizutani, Sayuri Tomonari, Kazumi Sakai, Yasushi Imamoto, Akimori Wada & Yoshinori Shichida (2018). Opn5L1 is a retinal receptor that behaves as a reverse and self-regenerating photoreceptor. Nature Communications, 9, 1255.