池田隆 iPS細胞研究所特定研究員、沖田圭介 同講師、升井伸治 同講師(現?京都府立医科大学特任准教授)らの研究グループは、分化した細胞がもつ細胞らしさ(細胞同一性)がどのようにして維持されているのか、そのメカニズムの一端を明らかにしました。
本研究成果は2018年4月11日(英国時間)に「Nature Communications」で公開されました。
研究者からのコメント
左から、池田特定研究员、冲田讲师、升井讲师
今回の研究から、 Srf がさまざまな细胞种特异的な遗伝子を制御して、细胞らしさ(细胞同一性)の维持状态をコントロールしていることがわかりました。 Srf はあらゆる种类の细胞でもともと働いていることが知られており、细胞外の环境など、さまざまな刺激によって活性化されます。こうした Srf への刺激により细胞らしさが失われる可能性が示されました。将来的には外部からの刺激などにより细胞らしさを変化させ、细胞の种类を変更する技术の开発や、细胞らしさの维持が関わるような疾患メカニズムの解明等につながると期待されます。
概要
ヒトのからだはさまざまな种类の细胞から构成されています。一度分化した细胞はそれぞれ特徴的な遗伝子が働き、细胞同一性を维持しています。他の细胞へと変化することは通常はありません。分化した细胞に少数の遗伝子を导入すると他の细胞へ分化可能な iPS 细胞ができる(初期化される)ことが知られていますが、この初期化における细胞同一性を不安定化させるメカニズムは十分に分かっていませんでした。
本研究グループは、初期化を阻害する遗伝子を网罗的に调べた结果、细胞の种类毎にその遗伝子は异なりますが、细胞骨格の遗伝子であるβアクチンはさまざまな细胞で共通して初期化を阻害する働きがあることを明らかにしました。また、βアクチンの働きを抑制すると、 Srf という転写因子が活性化され、细胞种に特徴的な遗伝子の働きが抑制されることがわかりました。 Srf はすべての细胞种で働く転写因子であり、细胞外の环境をはじめ、さまざまな要因で活性化されます。今回の成果によって、いくつかの疾患の発症に Srf が関与している可能性が示されました。また Srf の働きを利用して、外部からの刺激によって细胞らしさ(细胞同一性)を変化させる细胞工学的な新技术の开発にも期待がもたれます。

図: Srf が iPS 细胞コロニーを増加させる
详しい研究内容について
书誌情报
- 京都新闻(4月24日27面)、日刊工业新闻(4月12日25面)、日本経済新闻(4月16日9面)および毎日新闻(4月21日21面)に掲载されました。