滝真奈 医学部附属病院医員、安彦郁 医学研究科助教、馬場長 同准教授らの研究グループは、卵巣がんの免疫逃避のしくみを解明し上皮間葉移行関連遺伝子である Snail と免疫との関係に着目し、新しい「がん免疫逃避」のしくみを初めて明らかにしました。さらに、卵巣がんが分泌するケモカインと受容体との结合を阻害する薬剤が、卵巣がんの新规免疫治疗として有望である可能性も示しました。
本研究は、 2018 年 5 月 1 日に国际学术誌「 Nature Communications 」にオンライン公开されました。
研究者からのコメント
左から、滝医员、安彦助教、马场准教授
本研究によって、①卵巣がん患者の血液を调べることで、がんの免疫逃避の状态や予后を推测することができ、そのマーカーとして CXCL1 、 CXCL2 が有望である、 ②颁齿颁尝1 、 CXCL2 と CXCR2 の结合を阻害する薬剤が卵巣がんの新规免疫治疗として有望である、という二つのことが示唆されました。 CXCR 阻害薬は、気管支喘息や慢性肺疾患の治疗薬として临床试験を含めた开発が进められています。そして、本成果によって卵巣がんの治疗にも有効である可能性が示され、临床への応用が强く期待されます。その际、実际の卵巣がん患者に治疗効果が认められるか否か、临床试験を経て慎重に判断していきたいと考えています。
概要
卵巣がんは、その多くが进行がんの段阶で诊断され、治疗后再発も多い、难治性の病気です。近年、がん细胞がさまざまな方法で免疫细胞の攻撃を逃れながら増殖する「がん免疫逃避」と呼ばれるしくみが分かってきました。本研究グループは、上皮间叶移行( Epithelial-Mesenchymal Transition : EMT )関连遗伝子である Snail と免疫との関係に着目しました。これまで Snail は EMT を引き起こしてがんの転移などを促进すると考えられてきましたが、本研究では、卵巣がんが Snail の発现を通して肿疡内に骨髄由来免疫抑制细胞( MDSC )を诱导し、免疫から逃れているという新しい「がん免疫逃避」のしくみを初めて明らかにしました。本成果は、卵巣がんの免疫逃避のしくみを解明し、新规治疗の开発につながる重要な成果であり、今后の临床応用が强く期待されます。

详しい研究内容について
书誌情报
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Mana Taki, Kaoru Abiko, Tsukasa Baba, Junzo Hamanishi, Ken Yamaguchi, Ryusuke Murakami, Koji Yamanoi, Naoki Horikawa, Yuko Hosoe, Eijiro Nakamura, Aiko Sugiyama, Masaki Mandai, Ikuo Konishi, Noriomi Matsumura (2018). Snail promotes ovarian cancer progression by recruiting myeloid-derived suppressor cells via CXCR2 ligand upregulation. Nature Communications, 9, 1685.