内在性レトロウイルスを抑え込む普遍的な仕組み -抑制性ヒストン修飾の体細胞での機能を解明-

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竹本経緯子 ウイルス?再生医科学研究所助教、加藤雅紀 理化学研究所協力研究員(現?生命医科学研究センター上級研究員)、眞貝洋一同主任研究員らの研究グループは、哺乳動物の体細胞で内在性レトロウイルス(ERV)の発現を抑制する普遍的な仕組みを明らかにしました。本研究成果は、ERVの発現が引き起こす自己免疫疾患などの原因解明に役立つと期待できます。

本研究は、2018年4月27日に、国際科学雑誌「Nature Communications」に掲載されました。

研究者からのコメント

ヒトやマウスのゲノムには、転移因子を起源にもつレトロトランスポゾンと呼ばれる繰り返し配列が大量に存在します。ゲノムの机能を安定に保持するためには、レトロトランスポゾンを制御することが重要ですが、种类が多く、それぞれが膨大なコピー数をもつため、抑制机构についての研究は容易ではありませんでした。

今回、私たちはヒストンメチル化酵素が内在性レトロウイルスの転写活性を抑制している机构の一端をマウスの细胞を用いて明らかにし、ヒストンメチル化酵素が干细胞のみならず体细胞でも内在性レトロウイルスの抑制に必须であることを示しました。

内在性レトロウイルスは强力な転写活性をもっていますし、発现するとインターフェロン反応を引き起こすことから、ガンや自己免疫疾患との関连も示唆されます。寝ている子を起こさないことに生物は多大な労力をかけているわけですが、长い进化の时间共存を続けていることには意味があるのかもしれません。メチル化などのエピジェネティックなゲノム制御や、ヒストンメチル化酵素と転写因子をつなぐ机构についてさらに理解を深めていきたいと思っています。

概要

哺乳动物のゲノムの中で、内在性レトロウイルス( ERV )由来の配列は约 10 %存在します。 ERV の异常な発现は、近傍遗伝子の発现への影响や、 ERV 由来 RNA に対する免疫応答反応を引き起こします。体细胞における ERV の抑制には、 DNA のメチル化が重要な役割を果たしています。

本研究グループは、ヒストンの 9 番目のリジンのトリメチル化( H3K9me3 )修饰を担うヒストンメチル化酵素 Setdb1 遗伝子をさまざまな种类のマウス体细胞でノックアウトし、 ERV の脱抑制を网罗的に検証しました。その结果、 Setdb1 ノックアウト体细胞では ERV 领域の H3K9me3 修饰が一様に低下しますが、それぞれの细胞に特徴的な ERV の种类が脱抑制することが明らかになりました。また、 DNA のメチル化は ERV の抑制には限定的であること、组织特异的な転写因子が ERV の発现に重要であることが分かりました。本研究により、 H3K9me3 は従来の见解と异なり、どの细胞种においても普遍的な抑制エピゲノムとして ERV の抑制に寄与する可能性を提示しました。

図:本研究で提唱したモデル

详しい研究内容について

书誌情报

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Masaki Kato, Keiko Takemoto, Yoichi Shinkai (2018). A somatic role for the histone methyltransferase Setdb1 in endogenous retrovirus silencing. Nature Communications, 9, 1683.