ボノボはヒトに最も近い霊長類の一種です。動物には、嫌悪感によって病原菌や寄生虫が体内に侵入することを防ぐ「嫌悪感による適応システム」が備わっていると考えられています。Cecile Sarabian 霊長類研究所博士課程学生、Andrew MacIntosh 同准教授らの研究グループは、ボノボが汚れのない食物は積極的に食べる一方で、糞や土で汚れた食物には一切手を付けないことを実証しました。これは、ボノボにも上記のシステムが備わっていることを示し、ヒトが進化の過程で、どのようにしてこうしたシステムを獲得してきたのか解明する手がかりになると考えられます。
本研究成果は、2018年6月4日に、英国の国際学術誌「Philosophical Transactions of the Royal Society B」のオンライン版に掲載されました。
研究者からのコメント
ヒト以外の霊长类は、どのようにして病気に感染しないように行动选択しているのか? 今回のボノボについての研究は、そんな疑问から始まりました。この研究は、私たちがこれまでに行ってきたニホンザルやチンパンジーに関する研究と轨を一にするものです。一连の研究によって、ヒト以外の霊长类も、ヒトと同じように対象を见たり、においを嗅いだり、触ることによってリスクを理解できることが分かりました。さらに、彼らが病気に感染するリスクを避けるために行动を変化させていることも明らかになりました。ヒトは、不卫生なものへの嫌悪感から、饮食物や周辺环境を卫生的に保とうとする倾向がありますが、ボノボたち霊长类の行动もこれと机能的に似通っています。こうした嫌悪感は、霊长类を病気の感染から守る役割を果たしていると考えられますが、それを証明するにはさらなる検証が必要です。
概要
动物には、寄生虫や病原菌による胁威を避けるために、嫌悪感によってそれらが体内に侵入することを防ぐ「嫌悪感による适応システム」が备わっていると考えられています。本研究グループは、チンパンジーと同じくヒトに最も近い霊长类の一种であるボノボが、粪や土で汚れた食物に対しては食欲を减退させることを実証しました。ボノボは、汚れのない食物は积极的に食べる一方で、粪や土で汚れた食物には一切手を付けませんでした。さらに、悪臭を放つ食物に直面すると、それを取ろうとする素振りさえ见せないことが分かったのです。また、ボノボの幼児や乳児は、汚れた食物をあらかじめ注意せずに食べてしまう倾向があることも确认されました。これは、ボノボが幼児期にこの行為によって病気になり、成长の重要な时期に免疫システムを発达させている可能性を示唆しています。また、本研究では、ヒトに见られる「食物への新奇性恐怖症」が、ボノボにはあまり见られらないことが明らかになりました。病気のリスクを避けるために见惯れない食物を避けるヒトとは异なり、ボノボは新しい果物でも比较的抵抗なく口に运んでいたのです。
本研究成果は、ボノボがヒトと同じように嫌悪感に従って摂食行动を决定していることを示すとともに、ヒトの嫌悪感の起源を探るうえでも重要な知见を提供するものと言えます。

図:真ん中は何も汚れがついていないリンゴのスライス。左右には、スライスしたリンゴの上に粪と土を载せたものを置いた。ボノボは真ん中のリンゴだけ食べ、左右のリンゴについては取ろうとさえしなかった。
详しい研究内容について
书誌情报
【顿翱滨】
Cecile Sarabian, Raphael Belais, Andrew J. J. MacIntosh (2018). Feeding decisions under contamination risk in bonobos. Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences, 373(1751):20170195.
- 京都新闻(6月4日夕刊 8面)、产経新闻(6月4日夕刊 10面)、中日新闻(6月4日夕刊 3面)および毎日新闻(6月6日 23面)に掲载されました。