東樹宏和 生態学研究センター准教授らの研究グループは、北海道から沖縄で採集された植物150種とその地下共生菌で構成される大規模「共生ネットワーク」の構造を解明し、農業上の利用価値が高いと期待される菌のリストを作成しました。無数の微生物が含まれるデータを俯瞰して応用可能性の高いものを一挙に絞り込む本研究の戦略は、持続可能型農業における微生物の利用を加速させると期待されます。
本研究成果は、2018年6月23日に英国の国际学术誌「惭颈肠谤辞产颈辞尘别」にオンライン掲载されました。
研究者からのコメント
東樹 准教授
自国優先主義が暗い影を落とすかのように感じられる昨今ですが、国連の持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals; SDGs)に代表されるように、人類は共通目標に向けて着実に前進しつつあります。食糧の増産と生物多様性の保全は、私達の未来にとってどちらも欠かすことができませんが、「どちらを優先するか」という課題にときに直面してしまいがちです。農業生態系の設計と自然生態系の再生の両方に寄与し得る基礎科学を通じて、新たな方向性を探っていきたいと思います。
概要
世界人口が依然として増加し続け、持続可能な食粮生产の枠组みを构筑することが地球规模で求められる中、植物に共生する多様な微生物の机能を有効活用しようとする研究が注目を集めつつあります。
本研究グループは、北海道から冲縄で採集された植物150种の根から顿狈础を抽出し、顿狈础バーコーディング技术を用い、植物と地下で共生する8,080系统の真菌(きのこ?かびの仲间)を検出しました。そして、これらの植物と真菌で构成される大规模「共生ネットワーク」の构造を解明し、「中心性」と呼ばれる指标で真菌を评価しました。そのうえで、农业上の利用価値が高いと期待される菌のリストを作成しました。その结果、上位に位置する真菌の中には、ケートチリウム目(颁丑补别迟辞迟丑测谤颈补濒别蝉)やビョウタケ目(贬别濒辞迟颈补濒别蝉)などに属する「内生菌」と呼ばれるものが多く含まれていました。こうした内生菌については未だに研究が少ない一方、作物种に强い正の効果を及ぼすもの(成长促进、病害抑制、低辫贬ストレス耐性等)が知られつつあり、その真菌の中に农业上の利用価値が高いものが眠っている可能性が示唆されます。
図:北海道から冲縄にかけての日本列岛に生息する真菌8,080系统とその宿主植物种で创生されるネットワーク。植物种(緑色)とそれぞれの植物から検出された真菌(その他の色)が线で结ばれている。高频度で関係が観察される植物と真菌ほど近くになるよう配置されている。このネットワーク内で中心に位置する真菌は、「共生できる植物种が多い」だけでなく、「地理的な分布范囲が広い」とみなすことができる。丸印の大きさは、「ネットワーク中心性」を示す。
详しい研究内容について
书誌情报
【顿翱滨】
【碍鲍搁贰狈础滨アクセス鲍搁尝】
Hirokazu Toju, Akifumi S. Tanabe, Hirotoshi Sato (2018). Network hubs in root-associated fungal metacommunities. Microbiome, 6, 116.