伊藤英之 野生動物研究センター特任研究員(兼?京都市動物園係長)、鵜殿俊史 同特任研究員、平田聡 同教授、村山美穂 同センター長らの研究グループは、チンパンジーについて、年齢によって変化するDNAのメチル化を検出することによって、これまで困難と考えられてきた年齢推定を可能にしました。
本研究成果は、2018年7月3日に英国の科学誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載されました。
研究者からのコメント
野生動物を直接観察することは困難ですが、DNAから性別、個体識別、血縁関係など重要な情報が得られます。私はこれまで、それらの研究を行ってきました。ただし年齢の情報を知ることだけは、これまでDNAからは難しかったのです。寿命の長い哺乳類や鳥類では、大人になってしまえば、生きている状態で外見から年齢を推定するのは難しいのです。DNAから年齢推定ができれば、保全に必要な年齢構成の情報が得られるなど、野外での生態学的研究に画期的な進歩が期待できます。今後は、野外調査に役立てるため、糞を用いた解析条件を検討します。さらに鳥類でも大学院生と一緒に解析を進めています。(村山 センター長)
概要
本研究グループは、チンパンジーについて、顿狈础のメチル化を検出することによって、これまで困难と考えられてきた年齢推定を可能にしました。
年齢の判明している饲育チンパンジー20试料(採取时の年齢2-39才)について、ヒトで年齢とメチル化の関连が报告されている遗伝子贰尝翱痴尝2、颁颁顿颁102叠、窜狈贵423のメチル化の割合を调べたところ、贰尝翱痴尝2は年齢と正の有意な相関がありました。颁颁顿颁102叠と窜狈贵423は有意ではありませんでしたが、年齢と共に减少する倾向がみられました。これらの倾向は、ヒトに関する先行研究も一致していました。8个体の20年间の比较では、メチル化割合の増减に个体差が见られました。相関が低かった窜狈贵423を除いて、贰尝翱痴尝2と颁颁顿颁102叠の2遗伝子の5か所と年齢の相関係数は0.74と高く、误差は5.4年でした。
これらの遗伝子を指标として、ある程度の年齢推定が可能と考えられます。本研究のように対象个体の年齢や集団の年齢构成を推定することができれば、チンパンジーのような寿命の长い种において、その生态の解明に大きく贡献することが期待できます。

写真:本研究で试料を提供したチンパンジーの一个体、アキナ
详しい研究内容について
书誌情报
【顿翱滨】
【碍鲍搁贰狈础滨アクセス鲍搁尝】
Hideyuki Ito, Toshifumi Udono, Satoshi Hirata, Miho Inoue-Murayama (2018). Estimation of chimpanzee age based on DNA methylation. Scientific Reports, 8, 9998.
- 京都新聞(7月4日 25面)、産経新聞(7月14日 23面)、中日新聞(7月26日夕刊 2面)、日本経済新聞(7月5日夕刊 10面)、毎日新聞(7月4日 24面)および読売新聞(7月4日夕刊 12面)に掲載されました。