山口賀章 薬学研究科助教、岡村均 名誉教授(薬学研究科特任教授)の研究グループは、時差状態を示さないバソプレッシン受容体欠損マウスは、野生型マウスに比し、慢性的に時差のある環境下でも生存率が上昇することを見出しました。さらに、老齢の野生型マウスにおいても、バソプレッシン受容体の働きを抑制する薬剤を投与することで、慢性時差による死亡率を減少させることに成功しました。
本研究成果は、2018年7月19日に米国の国际学术誌「颈厂肠颈别苍肠别」のオンライン版に掲载されました。
研究者からのコメント
左から、山口 助教、岡村 名誉教授
かつて、ヒトは、夜明けと日没という自然の摂理に沿って生活していました。ところが、今や、ヒトが明るさを恣意的にコントロールし、人工的な昼夜环境で、昼夜ヒトは生活しています。20世纪中顷のジェット旅客机の発明による时差も、ヒトが生み出したものです。我々の今回の结果は、人為的な环境下での生活が、いかに危険なものであるのかを警告しているものです。生体リズムは外からは见えない法则で、遗伝子発现で规定され、细胞の代谢や个体机能と密接に结びついた、决して侮ってはならない、重要な时间原理であることを示しているのです。
概要
21世纪に入り、利便性を求める24时间社会はますます进行しており、それを支えるシフトワーカー(交代制勤务者)の需要も増大しています。また、长寿社会の到来とともに、高齢者がシフトワークに従事する机会も増えており、その労働卫生が注目されています。
これまでのマウスを用いた动物実験で、明暗リズムを常に前进させる慢性时差环境下で饲育すると、若年动物では生死にほとんど影响しないのですが、老年动物では死亡率が上がることが知られていました。これは、高齢个体では、体内时计と环境の明暗リズムが同期していない时差の状态が长く続くと健康が障害されることを示唆しています。
本研究グループは、时差状态を示さないバソプレッシン受容体欠损マウスは、野生型マウスに比し、慢性时差环境下でも生存率が上昇することを见出しました。このマウスは明暗リズムが前进するたびに行动リズムも前进させ、行动と明暗リズムの同期のズレが観察されませんでした。さらに、老齢の野生型マウスにおいても、バソプレッシン受容体の働きを抑制する薬剤を、概日リズムの中枢である视交叉上核に継続的に投与することで、慢性时差による死亡率を减少させることに成功しました。本研究成果により、これまで対処法がなかったシフトワーカーの病态に対する创薬を加速させることが期待されます。

図:バソプレッシンシグナルを抑制したマウスでは、慢性时差环境下でも死亡率は减少する
详しい研究内容について
书誌情报
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Yoshiaki Yamaguchi, Hitoshi Okamura (2018). Vasopressin Signal Inhibition in Aged Mice Decreases Mortality under Chronic Jet Lag. iScience, 5, 118-122.
- 京都新聞に掲載されました。(4月19日 24面)