希少放線菌が産生する新規抗がん剤リードを開発 -2-アミノフェノールを利用したプロドラッグ型抗がん剤の開発に期待-

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掛谷秀昭 薬学研究科教授、Shan Lu同研究員らの研究グループは、希少放線菌サッカロスリックス属A1506 株が産生するサッカロスリオリドBおよびその前駆体を見出し、両化合物の抗がん剤リードとしての可能性を明らかにしました。さらに、サッカロスリオリドB に含まれる2-アミノフェノールが、α,β-不飽和カルボニル基を有する医薬品のプロドラッグ型保護基として利用できる可能性を示しました。

本研究成果は、2018年7月19日に米国化学会誌「Organic Letters」のオンライン版に掲載されました。

研究者からのコメント

サッカロスリオリド叠を発见后、推定生合成経路より前駆体の存在を予测していましたが、さまざまな実験条件の工夫の结果、前駆体の単离?精製及び构造决定に成功しました。さらに、両者の作用机序解析を通じて、2-アミノフェノールが医薬品のプロドラッグ型保护基として利用できる可能性を示すという幸运に恵まれました。今后、これらの知见を活かして、新しい抗がん剤の开発に取り组みます。

概要

本研究グループは、天然资源を対象とした新规抗がん剤リードの探索研究过程で、希少放线菌に着目し、希少放线菌サッカロスリックス属础1506株が新规10员环マクロリド构造を有するサッカロスリオリド类を产生し、サッカロスリオリド叠がヒト线维肉肿细胞贬罢1080および分裂酵母に対して増殖抑制効果を示すことを明らかにしました。

また、同菌の代谢物解析(メタボローム解析)の结果、サッカロスリオリド叠の活性前駆体を见出し、その化学构造を解明しました。一方で、サッカロスリオリド叠は生理的条件下で、2-アミノフェノールが游离し活性前駆体に変换され、生体内で代谢され活性代谢物となる薬剤「プロドラッグ」として働く可能性を示しました。

本研究成果は、特异な化学构造を有するサッカロスリオリド叠および活性前駆体が抗がん剤リードになりうること、サッカロスリオリド叠に含まれる2-アミノフェノールが医薬品のプロドラッグ型保护基として利用できることなどを示し、新しい抗がん剤の开発に有用な知见を与えることが期待されます。

図:サッカロスリオリド叠および前駆体の化学构造

详しい研究内容について

书誌情报

【顿翱滨】

Shan Lu, Shinichi Nishimura, Kei Takenaka, Masashi Ito, Taira Kato, and Hideaki Kakeya (2018). Discovery of Presaccharothriolide X, a Retro-Michael Reaction Product of Saccharothriolide B, from the Rare Actinomycete Saccharothrix sp.A1506. Organic Letters, 20(15), 4406-4410.