うつ病における脳内炎症の役割の一端を解明しました

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公开日

成宮周 名誉教授、古屋敷智之 神戸大学教授、北岡志保 同助教、聶翔 同博士課程学生らの研究グループは、ストレスによる抑うつの誘導に自然免疫系による脳内炎症が重要であることを発見しました。

本研究成果は、2018年7月20日に米国の学术誌「狈别耻谤辞苍」のオンライン版に掲载されました。

研究者からのコメント

うつ病などの精神疾患は、遗伝素因とともに、环境要因、特に、社会的?心理的ストレスが発症の引き金になります。今回の研究は、普通、细菌やウイルスが引き起こす炎症が、心理的ストレスにより脳内で引き起こされ、それが社会忌避反応といううつ状态の诱导に働くことを示したものです。よく、うつ病は心の风邪と言いますが、今回の発见は、この言叶が単なる比喩でなく実态としてある可能性を示したもので、今后ヒトの精神疾患の理解と新规治疗の开発に繋がることを期待しています。この研究は、今回の论文の笔头着者である神戸大学の北冈助教、聂大学院生、共同责任着者である古屋敷教授が、京都大学の私の研究室に在籍していた时に一绪に始めたもので、今回、大きな意义のある论文に结実したことを嬉しく思っています。

概要

これまで、うつ病患者の血液中で炎症性サイトカイン(细胞间のシグナル伝达を担うタンパク质である「サイトカイン」のうち、炎症を促进するはたらきを持つもの)が上昇することなどから、うつ病と炎症との関连が示唆されてきました。しかし、うつ病と炎症の因果関係には不明な点が多く残されていました。

本研究グループは、うつ病の动物モデルである「反復社会挫折ストレスモデル」(マウス)を用いて、反復的なストレスが抑うつ状态を诱导するメカニズムを调べました。その结果、このストレスが自然免疫受容体である「罢尝搁2/4」を介して、内侧前头前皮质の炎症担当细胞であるミクログリアを活性化し、炎症性サイトカインである「滨尝-1α」と「罢狈贵α」の発现を介して、内侧前头前皮质の神経细胞の応答性减弱や萎缩、新しいマウスとの関わりを避ける社会忌避行动などのうつ様行动を诱导することを発见しました。一方、罢尝搁2/4欠损マウスでは、これらの炎症性サイトカインの上昇は见られませんでした。さらに、これらの炎症性サイトカインに対する中和抗体を内侧前头前皮质に投与したところ、反復社会挫折ストレスによるうつ様行动が抑制されました。

本研究成果は、うつ病の病态に脳内炎症による内侧前头前皮质の神経细胞の机能変化が重要であることを示唆し、自然免疫分子を标的とした新たな抗うつ薬の开発につながる可能性を提示しています。

図:本研究で解明した反復ストレスによる、うつ様行动を担う脳内炎症の働き

详しい研究内容について

书誌情报

【顿翱滨】

Xiang Nie, Shiho Kitaoka, Kohei Tanaka, Eri Segi-Nishida, Yuki Imoto, Atsubumi Ogawa, Fumitake Nakano, Ayaka Tomohiro, Kazuki Nakayama, Masayuki Taniguchi, Yuko Mimori-Kiyosue, Akira Kakizuka, Shuh Narumiya, Tomoyuki Furuyashiki (2018). The Innate Immune Receptors TLR2/4 Mediate Repeated Social Defeat Stress-Induced Social Avoidance through Prefrontal Microglial Activation. Neuron, 99(3), 464-479.e7.

  • 日刊工業新聞(7月20日 29面)に掲載されました。