岩崎淳 情報学研究科博士課程学生(現?福岡工業大学助教)、梅野健 同教授らの研究グループは、標準暗号(AES)の評価ツールとして用いられた乱数性評価テストのひとつ「離散フーリエ変換テスト」の完全な修正版を提案しました。乱数検定の最大の懸案であった参照分布の問題を解決した画期的な成果です。
本研究成果は、2018年8月1日に、日本の電子情報通信学会の国際学術誌「IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences」のオンライン版に掲載されました。
研究者からのコメント
左から、梅野教授、岩崎助教
暗号通货の基盘は暗号の安全性に深く関わる様になり、もはや暗号は特定の人向けの技术ではなく、全ての人にとって基盘となるものになりつつあります。歴史的に暗号の安全性は数理と深く関わってきましたが、この研究は、暗号の安全性を公正に评価する乱数性评価に関わる部分で、长年の悬案であった问题を完全に解决したものと考えます。暗号は一见すると地味ですが、暗号は全ての人に関わる技术と言う意识を持ち、今后も、応用と数理が直结する分野で研究を一歩一歩进めて行きたいと思います。
概要
現在、携帯電話などをはじめ、世界中で標準暗号(AES)が用いられています。このAESが2001年に選定された際、評価ツールとして乱数性評価テストNIST SP 800-22が使われました。ところが、その一つである離散フーリエ変換テスト(DFTテスト)において、系列が乱数であると仮定した時、参照分布が厳密に求まらないと言う致命的な課題がありました。
本研究グループは、この课题を完全に解决するための顿贵罢テストの修正を试みました。その结果、先行研究では「〇〇乱数が完全な乱数である」という仮定の下に近似的に参照分布を求めていたアプローチでしたが、本研究は全く异なり、何の仮定も必要とせずに数学的かつ独立に、正しい参照分布を持つ正确な顿贵罢テストを提案することに成功しました。
本研究成果は、情报セキュリティの基盘や暗号通货の流通で重要となる、全ての暗号自身の安全性や暗号文のランダム性、あるいはモンテカルロ计算や础滨机械学习で用いられる拟似乱数のランダム性の评価等、幅広い分野に用いることができます。さらに、础贰厂の后継となる次世代标準暗号选定では、より正确なランダム性が要求されるため、その际の重要な标準乱数评価ツールとしても活用が期待されます。

図:本研究のイメージ図。数値は本研究で算出したパワースペクトル。中央のグラフはそれを図示したもの。
详しい研究内容について
书誌情报
【顿翱滨】
Atsushi IWASAKI, Ken UMENO (2018). Randomness Test to Solve Discrete Fourier Transform Test Problems. IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences, E101.A(8), 1204-1214.