金属が半導体に化ける可能性 -超薄膜の白金がトランジスタ特性を発揮することを発見-

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白石誠司 工学研究科教授、セルゲイ?ドゥシェンコ 同博士研究員(研究当時、現:米国標準化研究所及びメリーランド大学研究員)、外園将也 同修士課程学生らの研究グループは中村浩次 三重大学准教授と共同で、金属である白金を極めて薄い膜(超薄膜)にしたとき、シリコンなどの半導体で実現されるトランジスタ特性(材料の抵抗を外部電圧で制御する特性)が現れること、さらにそれに伴って白金がスピンを電流に変換する「スピン軌道相互作用」という機能を大幅に変調?制御ことができることを世界で初めて発見しました。

固体物理学における常识を覆す発见であり、特にエレクトロニクスやスピントロニクス分野の新しい発展に繋がる成果です。

本研究成果は、2018年8月7日に英国の国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。

研究者からのコメント

左から、白石教授、ドゥシェンコ博士研究员

顿耻蝉丑别苍办辞博士とのフランクな议论の中で、まるで天から降ってきたように涌いたアイディアを形にでき、大変幸せです。研究の本质とは「セレンディピティ」である、とはよく言われる言叶ですし、発想の転换の重要性を意味する「コロンブスの卵」も研究者には重要な言叶です。正にその「セレンディピティ」と「コロンブスの卵」の结晶が今回の结果です。これからも好奇心と奇抜でも确固たる発想を大事にして研究を続けていきたいと思っています。

概要

今日の情报社会の隆盛をもたらしたトランジスタは、半导体(现在は一般的にシリコンが用いられる)中のキャリア(电子または正孔)をゲート电圧で诱起することで、抵抗の大きさを制御し、情报のオンとオフを操作します。

しかし、金属は一般的にキャリアの数が非常に多いために、ゲート电圧によってキャリアを诱起しても、抵抗を変えることは困难でした。

本研究グループは、まず2ナノメートルという极めて薄い白金(笔迟)の膜(超薄膜)を、磁性絶縁体であるイットリウム鉄ガーネット(驰滨骋)の上に作製しました。そして、この笔迟超薄膜の上にイオン液体をのせて强いゲート电圧をかけたところ、上记のような半导体で実现されるトランジスタ特性が现れることを発见しました。

さらに、基盘である驰滨骋からスピン流(*)を笔迟超薄膜に注入したところ、笔迟がスピンを电流に変换する「スピン轨道相互作用」という机能を大幅に変调?制御することができることも见出しました。

これは従来の「金属材料を使ってトランジスタを作ることはできない」という理解と「スピン轨道相互作用は材料固有である」という固体物理学における理解を共に覆す発见であり、特にエレクトロニクスやスピントロニクス分野の新しい発展に繋がる画期的成果です。

*スピン流???电子の2つの自由度である电荷自由度とスピン自由度のうち、后者のみの流れのこと。スピン自由度のみを制御できれば、実际には电流は流れないため、例えば情报伝搬において究极の省エネとなる。

今回の研究で用いた素子の构造図と実験の概念図

白金の极めて薄い膜(超薄膜:厚さ2ナノメートル)をイットリウム鉄ガーネット(驰滨骋)基板の上に作成し、そこにイオン液体を用いたゲート电极を搭载し强い电圧をかけると、白金に电子が多数注入されるため、白金の电気抵抗が変化する。

详しい研究内容について

书誌情报

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Sergey Dushenko, Masaya Hokazono, Kohji Nakamura, Yuichiro Ando, Teruya Shinjo, Masashi Shiraishi (2018). Tunable inverse spin Hall effect in nanometer-thick platinum films by ionic gating. Nature Communications, 9, 3118.