千葉勉 名誉教授(関西電力病院院長)、児玉裕三 医学研究科講師(研究当時、現:神戸大学教授)、塩川雅広 同医員(研究当時、現:神戸大学特別研究員)らの研究グループは、指定難病である自己免疫性膵炎の患者がもつ自己抗体が、自身の膵臓に存在するラミニン511というタンパク質を誤って攻撃していることを発見しました。副作用の少ない新たな治療法の開発につながる成果です。
本研究成果は、2018年8月9日に米国の国際学術誌「Science Translational Medicine」にオンライン掲載されました。
研究者からのコメント
左から、千叶名誉教授、児玉教授、 塩川特别研究员
私たちは、指定难病である自己免疫性膵炎の原因を解明しました。自己免疫性膵炎は、糖尿病を引き起こしたり、膵がんと区别がつきにくいことが问题となっています。この病気は、自分の免疫が误って自身の膵臓を攻撃してしまうことが原因と考えられてきましたが、どの物质を攻撃しているかは不明でした。私たちは、自己免疫性膵炎患者さんがもつ自己抗体が、膵臓のラミニン511という物质を攻撃していることを発见しました。今后、ラミニン511に対する自己抗体を测定することが、诊断に有用となり、この発见が副作用の少ない治疗开発の础になっていくと考えられます。これからも少しでも患者さんの役に立てる研究ができたらと考えております。
概要
自己免疫性膵炎は日本で确立された新しい疾患ですが、膵臓の炎症と线维化により糖尿病を引き起こしたり、膵がんと误られて手术されたりすることが问题となっています。この病気は、自分の免疫(自己抗体)が误って自身の膵臓を攻撃してしまうことが原因と考えられてきましたが、膵臓の中のどの物质を攻撃しているかは、多くの研究者が长年探していたにもかかわらず不明でした。
本研究グループは、この原因物质(自己抗原)を探索するために、自己免疫性膵炎患者の血液から抗体を抽出し、マウスに投与しました。その结果、自己抗体が、自身の膵臓に存在するラミニン511という细胞外マトリックス(细胞外に存在して身体の构造を支える物质)のタンパク质を误って攻撃していることを発见しました。これにより、ラミニン511が自己免疫性膵炎の病因であることが确认されました。
今后、ラミニン511に対する自己抗体を测定することが、自己免疫性膵炎の确定诊断に有用となり、この発见がより副作用の少ない新たな治疗开発の础になっていくと考えられます。
详しい研究内容について
书誌情报
【顿翱滨】
Masahiro Shiokawa, Yuzo Kodama, Kiyotoshi Sekiguchi, Takeshi Kuwada, Teruko Tomono, Katsutoshi Kuriyama, Hajime Yamazaki, Toshihiro Morita, Saiko Marui, Yuko Sogabe, Nobuyuki Kakiuchi, Tomoaki Matsumori, Atsushi Mima, Yoshihiro Nishikawa, Tatsuki Ueda, Motoyuki Tsuda, Yuki Yamauchi, Yojiro Sakuma, Takahisa Maruno, Norimitsu Uza, Tatsuaki Tsuruyama, Tsuneyo Mimori, Hiroshi Seno, Tsutomu Chiba (2018). Laminin 511 is a target antigen in autoimmune pancreatitis. Science Translational Medicine, 10(453):eaaq0997.
- 産経新聞(8月28日 25面)に掲載されました。