椛島健治 医学研究科教授、松本玲子 同博士課程学生(研究当時)、大日輝記 同講師らの研究グループは、皮膚の表面にあるTRAF6という細胞内シグナル伝達物質が、乾癬(かんせん)の発症や持続に必須であることを発見しました。
本研究成果は、2018年8月9日に米国の国際医学誌「JCI Insight」のオンライン版に掲載されました。
研究者からのコメント
大日 講師
京都大学の皮肤科学では乾癣の新しい治疗标的を见つけました。当时大学院生だった松本玲子さんが中心となり、皮肤の表面の细胞に罢搁础贵6という物质がない动物では乾癣という皮肤の病気にならないことを明らかにしました。乾癣の患者さんは世界に1亿人以上いると见つもられていて、现在の治疗の课题を克服できる新薬の开発に希望をもてます。
概要
乾癣の患者数は世界人口の约3%と非常に多く、近年、抗罢狈贵α抗体など免疫の働きを抑える抗体を永続的に注射する治疗が効果を上げていますが、治疗费が高额であり、また使用中に抗体が効かなくなる患者の割合が2、3割にのぼる场合もあるため、新しい安価で安全な治疗が求められています。
本研究グループは、皮肤の表面の表皮という部分に细胞内シグナル伝达物质「罢搁础贵6」のないマウスは、乾癣にみられるような免疫の働きがおこらず、乾癣を発症しないことを発见しました。さらに、このマウスの皮肤に滨尝-23というサイトカイン(免疫调节因子)を注射して、乾癣に特徴的な免疫异常を诱导しても、やはり乾癣の発症は抑制されました。
本研究结果により、表皮の働きが、乾癣の皮肤にみられる免疫の异常な活性化に必须の役割をもつこと、また、皮肤の表面の细胞にある罢搁础贵6は、皮肤での异常な免疫の活性化による乾癣の発症やその持続に必须であることが明らかになりました。
本研究成果により、免疫の异常により产生される物质ではなく、その上流で免疫を调节する皮肤の働きが、新しい治疗の标的となりうることが示されました。罢搁础贵6が、抗体医薬に代わる新しい治疗の标的となり、抗体医薬による治疗のさまざまな课题を解决する可能性が期待されます。
详しい研究内容について
书誌情报
【顿翱滨】
Reiko Matsumoto, Teruki Dainichi, Soken Tsuchiya, Takashi Nomura, Akihiko Kitoh, Matthew S. Hayden, Ken J. Ishii, Mayuri Tanaka, Tetsuya Honda, Gyohei Egawa, Atsushi Otsuka, Saeko Nakajima, Kenji Sakurai, Yuri Nakano, Takashi Kobayashi, Yukihiko Sugimoto, Kenji Kabashima (2018). Epithelial TRAF6 drives IL-17–mediated psoriatic inflammation. JCI Insight, 3(15):e121175.
- 日本経済新聞(8月10日 34面)に掲載されました。