那須田周平 農学研究科准教授と農研機構などが参加した国際コムギゲノム解読コンソーシアム(IWGSC)は、コムギゲノムの塩基配列解読を達成しました。この情報を利用し、有用な遺伝子の単離やDNAマーカーの開発を通じて、新品種育成が加速すると期待されます。
本研究成果は、2018年8月17日に、国际科学専门誌「厂肠颈别苍肠别」のオンライン版に掲载されました。
研究者からのコメント
パンコムギはその進化の過程で二回の種間交雑と染色体倍加を経て成立した異質六倍体で、核内に3コピーの祖先を同じくする相同な配列を持ちます。しかも、ゲノムサイズが大きく(17 Gb)、その80パーセント以上が反復配列で構成されるため、ゲノム解読の魔境とされていました。
国际コムギゲノム解読コンソーシアム(滨奥骋厂颁)は、最新のゲノムアセンブリ技术を駆使して、パンコムギのゲノムの94%をカバーする参照ゲノム配列の解読を达成しました。ゲノム解読により见出された107,891个の遗伝子は、今后のコムギ科学を支える学术的基盘となります。とりわけ、コムギの品种改良によって、世界の人类の食料问题の解决に大きな贡献をすると期待されます。
コムギの近代科学は坂村博士が1918年に基本染色体数と倍数性を発见したことから始まりました。それからちょうど100年后に参照ゲノム配列の解読を完了したことで、新たな时代を迎えました。今后、本学で保存してきたコムギとその近縁种の生物遗伝资源の持つ遗伝的多様性を活用した研究が飞跃的に进展すると期待しています。
概要
2005年に结成された国际コムギゲノム解読コンソーシアム(滨奥骋厂颁)は、イネやトウモロコシとならぶ世界の叁大穀物の一つであるコムギのゲノム解読を目指して活动を进め、2014年には染色体毎に区分された概要配列を解読し、公表しました。しかし、概要配列は细かく分断されており、染色体内での遗伝子位置が不明であったことから、染色体が一本につながった精度の高い参照ゲノム配列が求められていました。
本研究では、コムギの21本の染色体に相当する配列を构筑し、さまざまな特徴を决定する10万个以上の遗伝子を见出し、病害抵抗性や小麦粉の品质に関わる遗伝子群の详细を明らかにしました。
コムギは世界中の人たちが日常消费している食物カロリーの约2割を占めており、本研究成果は、人口増加や気候変动による世界的な食粮问题を解决するための作物改良研究の基盘となるとともに、我が国においても、縞萎缩病(しまいしゅくびょう)等の各种病害に対する抵抗性品种や製パン性を向上させた高品质品种等の新品种开発の加速化につながると考えられます。
図:解読レベルによるコムギゲノム配列情报の违い。共通の祖先から分化してきた叁つのゲノムを区别して、さらに、それを一つながりにしていくことで、より正确で使いやすいゲノム情报を得ることができる。
详しい研究内容について
书誌情报
【顿翱滨】
Rudi Appels et al. (2018). Shifting the limits in wheat research and breeding using a fully annotated reference genome. Science, 361(6403):eaar7191.