植田充美 農学研究科教授、青木航 同助教、高村陽介 同修士課程学生(現?塩野義製薬)、里村淳 博士課程学生(現?米ノースウエスタン大学?日本学術振興会特別研究員)らの研究グループは、兵庫医療大学と共同で、関節リウマチにおいて未知のエクソソームmiR-323a-5pとmiR-1307-3pを発見しました。さらに、これらのマイクロRNAの配列からターゲットとなる遺伝子を推定することに成功しました。
本研究成果は、2018年8月11日に米国の学術誌「PLOS ONE」のオンライン版に掲載されました。
研究者からのコメント
高齢化社会を迎えて、日本では、约100万人、米国约200万人、欧州约200万人の推定患者数を数える関节リウマチは、痛みを伴う関节の肿れやこわばり等の症状があり、悪化すると関节が変形し日常生活に支障をきたします。この疾患は自己の细胞を免疫システムが误って攻撃してしまうことで発症する自己免疫疾患に分类されます。
近年、高価ではありますが、抗体医薬―分子标的医薬の出现により関节リウマチの治疗が进みつつあります。しかし、これらの分子标的薬の効かない症例も多く、予防や未病段阶の诊断は目下のところ不可能であると言わざるを得ません。これは、関节リウマチの多様な発症の想定される细胞内の复雑な分子メカニズムがいまだに不明なためです。私たちは、兵库医疗大学のリウマチ研究グループと共同で、関节破壊のメカニズムを、私たちの开発してきたトランスオミクス技术を用いて解析した结果、関节内でのサイトカインを介した、异常な细胞间コミュニケーションを司るエクソソームをとらえました。これは、新しい予防や未病诊断マーカーに活用の道を开拓するものと考えられます。
概要
関节リウマチは、関节内の炎症により、软骨や骨が破壊されて関节が変形する病気ですが、発症メカニズムの全容は解明されていません。
本研究グループは、エクソソームと呼ばれる小胞に含まれるマイクロ搁狈础がそのメカニズムに関与している可能性に着目しました。本研究は、関节リウマチ患者の滑膜线维芽细胞から树立された培养细胞株(惭贬7础)を、炎症性サイトカイン罢狈贵-αの有无での条件下で培养しました。その结果、これまでに知见のないエクソソーム尘颈搁-323补-5辫と尘颈搁-1307-3辫を新たに発见しました。
これらのエクソソームから抽出したマイクロRNAの配列からターゲットとなる遺伝子を予測したところ、miR-323a-5pは炎症シグナルに関与するCD6を、miR-1307-3p は破骨細胞分化の抑制に寄与するNDRG2を、それぞれターゲットにしていることが推定されました。分子標的薬の効かないリウマチ疾患や、リウマチの予防や未病段階の診断への新たな分子マーカーとして期待されます。
図:本研究のワークフロー
详しい研究内容について
书誌情报
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Yosuke Takamura, Wataru Aoki, Atsushi Satomura, Seiji Shibasaki, Mitsuyoshi Ueda (2018). Small RNAs detected in exosomes derived from the MH7A synovial fibroblast cell line with TNF-α stimulation. PLOS ONE, 13(8):e0201851.